ご依頼主は私の古い友人でもあり、富山の管楽器工房を経営する高木君からのご依頼でした。
彼は古くからのB'Zファンでして、僕もそれを知ってはいましたが、まさかエピフォンとは言えシグネイチャ−を買うとは。
と言った所で、今回のメニューは以下の通り
1:フレットすり合わせ
2:ナット交換
3:ブリッジ交換
4:テールピース交換
5:PUスイッチ以外全て電装系交換
と言った様な所が今回のメニューです。
中国青島ファクトリー製ですが、各部見ると中々良い造形をしていると思います。
おっと、うちの社長のカエル子さんが。
因みにカエル社長は作業場でふんぞり返っている、うちの癒しキャラでして、
たまにBLOGに載せてあげよう/若しくはこいつが喋ったら面白いな等と思ったりしてます。
BLOG内でカエル社長を見たで1割引き!とかやっても面白いかもしれませんね。
そんな事はさて置き、各部をチェックしながら部品を一旦全て取り外します。
今回はフレットのすり合わせですがセットネック物なので、取り回し上、ボディー全体を養生します。
又この作業と並行して、ネックの状態を確認しておきます。
で今回触って、へぇーと思った事が。
それはこのネック、ダブルアクショントラスロッドが使われておりまして、順反りと逆反りの両方に対応出来るロッドが仕込まれておりました。つまりプアでよく動くネック材でもある程度の動きには追随出来ると言う事。正しく仕込まれてさえいれば、ある種物凄く楽器を長持ちさせる事が出来る可能性を秘めたネックとも言えます。
又、触った感触及び使うレンチの種類から類推すると、、、
http://www.stewmac.com/shop/Truss_rods/Adjustable_truss_rods/Hex_Nut_Hot_Rod_Truss_Rod.html?tab=Pictures
おそらくこのトラスロッドが使われている感じがします。製作家の方ならご存知かと思いますが、このロッドの調整範囲の広さ及び効き方はガチです。かなり強力に反りを修正できますので、ヴィンテージ仕様に拘らず、あくまでストレスフリーな道具としての楽器製作の依頼が有った際、私が製作する楽器はほぼこの種のロッドが採用されています。
欠点も無くはないのですが、、取り敢えずその話はまた別の機会に。
後はいつも通りの作業です。
今回それ程フレット上面の高さの不揃いが発生していなかった為、フレットを削る分量も割合少なくて済みました。一回これで状態を整えてあげると、消耗するゾーンが温存されてますので長く使えるって事ですね。
次は電装系を見て行きます。
こんな感じで所謂量産楽器としては至極普通の状態ですが、導電性塗料の塗り斑が有ったり、配線処理等、割と雑然としてますので、その辺も修正整理します。
導電性塗料を塗り直した後、乾燥待ちの間に並行してサーキットを作っていきます。
組み込んだらこんな感じですね。
今回はポットはCTS社製の物×3 パッシブトーンには在庫していたオイルコンデンサを使って仕上げ、配線材はここの所私が気に入って使っているとある会社の小容量シールドケーブルを使います。
配線処理を済ませた所で、次はナット交換。
元は良く有るプラ素材のナットですが、取り付け方が良くないので、ローフレットでの弦高が非常に高く、Fのコードで音程を測ると、最大で音程が7セント程もシャープしてしまう代物でした。これは頂けないので溝切り調整をし直しても良いのですが、これを機会に交換してしまいます。
今回交換に使用するのはグラフテック社製のカーボン系素材のナットです。
この素材、色々広告では面白い事が書いてありますが、その特筆すべき点は素材自体が持っている潤滑性でしょうか。所謂平織り/綾織りのカーボン素材のナット材より柔らかくて加工がしやすく、潤滑性に富んでいる為、摩耗が少ないという利点もあります。その為、チューニングが安定しやすく、音色も上々なので近年は色んな方に好んで使われてます。
今回は在庫の原材サイズから削り出し、完成させました。
ってな感じで弦を張って調整/検討/調整を行えば完成です。
今回実は写真が無いのですが、精度があまり宜しくないオリジナルのブリッジ交換と同じくテールピース交換も同時に行っておりまして、結果的には木部とPUとペグ以外は全部私の手が入った状態と言う事になりますね。
弾いてみた感じ、成る程、これはこう言う音がする楽器なのか。と先ず膝を打つ様な音で、
PUがTAKモデルのバーストバッカーと言うのもあるのでしょうが、馴染みのある音色になりました。
レスポールとも少し違ういい感じに低域の抜けた歪みの乗りやすい音ですね。これ個人的には好きな音です。
又ポールピース毎の音量バランスもフロント/リア/全弦で取ってあるので、弾いた感じだとコード感が一発で固まって出てくるような音色に仕上げてます。
言葉で言うと。。。
前に飛ぶフロントPUによるリードトーン
クリーンではぞくぞくする綺麗なハーフトーン
リアではバランス良く歪みを刻める
そんなバランスで組み立ててあります。
高木君、ご依頼ありがとうございました。
彼は冒頭にも書きましたが、富山県で管楽器のリペア工房をやってます。
リペアスタジオ高木
もし管楽器の事でお困りの方がいらっしゃれば是非覗いてみて下さい。