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2015年01月08日

ヘッドウェイHD-110エレアコ化加工(フィッシュマンレアアースブレンド改造を含む)

昨日に引き続き出先からBLOG更新

今回はヘッドウェイHD-110エレアコ化加工と言う事で京都府のR様より案件を頂きました。

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古いヘッドウェイと言えば国産マーティンコピーの中では名機とされ、オール単板物で有れば比較的高額で取引されているモデルですね。
近年、その古いモデルの材料が倉庫から出て来た為、小ロットのみ再生産されたんだそうですが、それも既に絶版となっていたかと思います。今回の楽器も細かく見て行くと忠実にマーティンを踏襲し、本当に良く出来ておりまして、音色の方も申し分なく、非常に豊かな音色がする楽器でした。

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今回はこの楽器にフィッシュマンレアアースブレンドと言うPUを搭載し、エンドピンジャック加工と合わせてPUの電源9V化する事となりました。

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電源ユニットはいつも通りこんな感じです。

ここの所、よくこのユニットについてお問い合わせを頂くのですが、先ず開発夜話から始めるのが良いかと思いますので、御一読いただければ幸いです。

このPUは、オリジナル状態では内部回路を駆動させる為に、一般的なボタン電池を2個直列で本体に直接取り付けられているバッテリーホルダーに納める様になっています。所がこのバッテリーホルダーはどうもバッテリーの保持力が弱いようでして、様々な振動からライブ中に電池が外れてしまう等のトラブルが私の周囲で相次いでおりました。それがおよそ8年ほど前の2006年頃でしたでしょうか。(2014年現在では、多少強くなったような気がしなくもないです)

そんな中、古い馴染みの現在はニューヨークに渡ってしまった有るギタリストの楽器にこのPUが載っており、同じ様なトラブルが有った為、なんとかならないかという相談が有り、色々考えたり、ディスカッションした結果出て来た答えが、上記のバッテリーユニットを9Vに変えてしまうという案でした。

これを実行してみますと、第一の改善目的であったバッテリーの脱落と言った煩わしさからは解放される結果となりました。また、この改造により電源が安定しますので、ダイナミックレンジが広がったという評価も初期の頃に沢山頂いたものです。

この他にも副次的に起きた事ですが、バッテリーの持ちも通常と変わらず、特殊と言えば特殊なボタン電池を使用する事を思えば、リハスタやライブハウス界隈ですぐ入手出来る9Vバッテリー化は、ことのほか利便性が良く、エフェクター等と同規格になりますのでバッテリーの使い回し出来ると言った点で沢山のお客さまに高評価して頂いたのも嬉しかった事の一つです。

そんな感じで加工サービスを始めてみると、最近はそれほど頻繁では無くなった物のコンスタントにお引き合いを頂く息の長い商品になったなあ等と思う次第。ご愛顧頂いているお客様には感謝です。

その当時書いた記事がまだ残っておりますのでこちらにリンクを貼っておきます。
http://repairtech.seesaa.net/article/17358936.html

因みに、この改造を行うと当然ながら正規メーカー保証は受けられなくなりますので、その点だけ予めご了承ください。

と言った所で、早速エンドピンジャック加工に入ります。
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このPUはエンドピンジャックと言えばこれって言うぐらいスタンダードなスイッチクラフトの物が標準で付いておりまして、オーナーさんはこれまで、PUの使い回しを行う為に、あくまでエンドピンジャックを楽器からぶら下げて使用されていたとの事。今後この楽器をメインで使用する為に木部加工に踏み切ったというのが今回のお客様のご要望です。

さてこれを楽器に直接取り付けるには、楽器側の木部加工を行わないといけません。
最初から付いているストラップを掛ける為の所謂エンドピンと言うパーツを除去していきます。
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除去してみて解った事ですが、セルバインディングのセンターにエンドピンの穴が来ておりませんので、ここは今回セルの中心に穴が来るように加工し直します。

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まずはドリルビットが逃げないように、簡単に埋め木をします。私共ではこう言った穴の拡張作業の場合は、必ず埋め木をしてから加工を行う様にして事故を起こさない様に細心の注意を払います。また埋め木に円型テンプレートマーキングをして、センターも出し直します。

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そして12φの木工用ドリルビットで穴を開け直したのが上記の写真です。

この後ジャックを取り付けたのですが、その写真だけは撮り忘れてしまいました。とは言う物の所謂エンドピンジャックを正しく取り付けただけですので、そんなに珍しいモノでは有りませんが。

その後PUを改造し電源ケーブルを増設の上、ユニットに接続できるようにして、、、
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加工作業そのものは完成です。
今回バッテリーユニットの取り付け位置は裏板の1弦側手が届く範囲としました。写真では非常に解り難いですが。。

その後、楽器本体のメンテナンスを少々行って完全完了です。

試しに弾いてみましたが、元の楽器の素性が良い為か非常にレスポンスの良い音が今回も出ました。

こんな回路ですがこれからも永くご愛用頂ければ幸いです。

京都府R様
ご依頼ありがとうございました。またのご用命お待ちしております。


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2015年01月07日

オリジナルスシグナルプリットボックス製作

皆様のお陰で2015年も無事スタートさせる事が出来ました。
本年も何とぞよろしくお願いいたします。

さて今回の記事ですが、東京のスタジオシーンで活躍するギタリストの吉田穣氏より、エレアコ、エレキギター双方の信号の切り替えフットスイッチペダルを製作してほしいと言う依頼が入ったのが昨年の夏の終わりごろでしたでしょうか。

御本人さんは、様々なシーンに対応する為に複数本の楽器を常に使用したり、ゴダンのエレキ/ピエゾ同梱のギターなどを使用している関係上、信号ラインや配線その物が複雑に入り乱れる事を嫌う事や、利便性の問題からこの様なオーダーに思い至ったそうです。

内容をお伺いしますと2in-2outのスプリットボックスで、フットスイッチを二つ使い、シグナルを使い分けたいとの事でした。
次の通りの仕様でしたし、製作その物は問題ありませんのでお受けした次第です。

@入出力
A-IN----A-OUT
B-IN----B-OUT

A制御スイッチ
★フットスイッチAはA-OUT又はB-OUTの任意選択スイッチ
●フットスイッチBはトゥルーバイパス時はA-OUT+B-OUT同時出力
☆フットスイッチBがウェットの場合、フットスイッチAで選んだ信号のみ出力
○各々の選択チャンネルはLEDで視認出来るようにしてほしい。

とまあ、フットペダルのワンオフ製作だからこその要望が多い内容となりました。

打ち合わせてる際の手書きのメモとかはこんな感じになります。
イメージ図最終版&製作方針_01_R.jpg
極めてアナログな感じですが、まあ多かれ少なかれこんなものかな。
大事な事は肝になる点をフォーカスして絞り込んでいくって事でしょうか。

その後実際の制作に入って行きます。
IMG_3796_R_R.JPG
製作そのものは大して難しい事ではないのですが、こう言ったスプリットボックスの場合、ポップノイズが出てしまうとわざわざワンオフする意味もありませんので、極力出ない様な材料や方法を使って組み込んでいきます。とはいっても自作エフェクタ界隈ではおなじみの部材ばっかりと言えばそうなんですが。

その間に、ラベルデザインについて吉田さんと擦り合わせるのですが、、、
多色版スプリットボックスイメージ図仮カラーチャート_01.png
こんな感じフリーデザインでざっくり作ってみて、ご本人の希望に最も近い物から、完成イメージまでブラッシュアップを行います。

そしてご希望のデザインの落とし所が決まりました。
スプリットボックスデザイン最終版.jpg
紫ベースのポップな感じですね。私にもう少しデザインセンスが有れば良いのですが。。こう言った感覚勝負の物は中々難しいモノで、所謂デザイナーさんってのは本当に引き出しが多くて、別件でいつも仕事ぶりを見るにつけて、脱帽します。

こんな所で組み上げて行ったら、、完成です!
IMG_3808_R_R.JPG

スイッチ切り替えによるポップノイズが極めて小さくなるように部材を選び、配線を行い、過酷なレコーディング/ライブ現場に投入しても殆どポップノイズが出なかったというレビューを頂きました。

そんなこんなで簡単にでは有りますが製作記事は終了ですね。如何だったでしょうか。

吉田穣氏プロフィール
http://popcorestudio.com/school/minoru_yoshida.html
スタジオワークやライブワーク、ギター教室等何でも来いのナイスガイですので、もし音源製作関係者さんにご興味のある方がいらっしゃれば是非お声掛けをお願いします。

それではご依頼ありがとうございました。またのご愛顧をお待ちしております。
posted by IRP Products at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | エフェクタ関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月02日

2014年のご愛顧のお礼と2015年のご挨拶

遅ればせながら明けましておめでとうございます。既に幾つかの作業を開始しております。一般のお客様向けの受付は1/4よりとさせて頂きます。本年は昨年以上の受注が出来る様環境を整える所存。2015年も何卒宜しくお願い致します。

どうやったって終わらない仕事を抱えていても2014年は既に終わりで、
それでいてもやはり仕事を納めなければならなかったのですが。

これは私事では有りますが、ご報告を兼ねて。

昨年年末に世話になっていた貿易系の仕事から一時離れる事となりました。
ここに至るまでに様々なご助言、励まし等、有難いお言葉等を頂きまして誠に有難うございました。

これらに端を発した話等はさて置いて、早速既に次に向けて動き出しておりまして、既に幾つかのお引き合いを頂いており、大変恐縮している次第です。
私程度の人間でお役にたてるのであれば、ぜひご協力させていただきたい所存、新年より宜しくお願い致します。

今年を良い年にするには、妥協をせず、甘言に惑わされず、嫌な物は嫌と言う主義へ進路を変え、自分の主導を自分に取り戻す為に地盤作りや、色んな物のあり方についてもう一度取り組み直す年にしようと思っております。

さて楽器についてですが、、昨年の記事でリノベーションの話と言う話を書いたのですが、ヴィンテージは元より、工場のライン生産された物で、なんだか愛情をかけきれないな、、なんていう楽器も安易に買い換えるより、徹底したメンテをしてやれば、生まれ変わる事も度々あります。

それ以外でも、、、、最初の内は可愛がられていた物が、その内愛情が薄れて、、、綻びや風化などで見た目も機能もがた落ちになって、仕方なくそこに有るだけになっている楽器、、、プレーヤーさんなら誰しも一本や二本、身に覚えがありますよね。

そういった楽器、今年も大量にお待ちしてます! しっかり磨いて、作り変えて、生き返らせますよ!

そうすれば、楽器を通じて、演奏の道具以上の何かが獲得出来るのかもしれません。

リノベーションとは、動機や理由又はその内容は、その時々において依頼者の内包的な心の有り様を示していて、それを欲して実行する事は「物」を大事にすると言う事もさる事ながら、心に豊かな森を茂らせる栄養を欲しているとでも言うんでしょうか、そういった無形では有るけれども確かな栄養が心に蓄積できると思うのです。これは有る友人の言葉を借りれば、「粋」呼ばれる生き方の原動力にも繋がると思っています。
そう言う心に栄養を貯め込む為にも、今年も精一杯作業させていただきます。

そんな訳で、月並みながら、本年も皆様のご愛顧とご指導の程宜しくお願い致します。

2014年12月31日 IRP PRODUCTS 代表

お問い合わせはこちらから
http://i-r-p.net/contacts/

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2014年11月15日

隣接分野の与太話

まぁ相変わらず、与太話が続く訳ですが、今回は自身が口を糊して所属する分野に隣接する世界について書いてみようかと思います。

さて、IRPももう随分ネット上では長く生息しておりまして、なんだかんだで10年ですか。
その間色々な事が有ったのですが、まあ一つ一つの事案は置いておいたとして、このネットの上からの現実世界へのアプローチと言う方法で、色々やっておりますと、引き合いだったり、ご依頼だったり、問い合わせだったり色んな出会いが有ります。

そんな中、作業内容がギター修理製作開発と近しいけれど、ギターではない方面の方との出会いがそこそこ有ったりします。例えば三味線の方ですとか。そういった方々が所属する所を隣接分野と定義してお話を進めて行きたいと思います。

さて、当の私はと言うとギター修理だけに留まらず色んな引き合いや、様々な環境の要因からとある貿易系の仕事にも関係しているのですが、この貿易関係の仕事と言うのはギターに限らず楽器業界の隣接分野としてかなり身近で有り密接な関係の存在でして、例えば弦一つ取ってもそうですし、木材やディマジオだとかダンカンのPU、そもそもボリュームゾーンとして国内で最も売れるフェンダーやギブソン等と言う海外ブランドの楽器は、全て海外から輸入されて来た舶来品に当たります。つまり貿易による取引の後、日本に入ってきている訳ですね。これを隣接分野と言わずしてと言った所でしょうか。

そこで私は食っていく為と言うだけでなく、隣接分野に対する知的好奇心の範疇から、数年前から貿易関係の仕事も手掛ける様になり、今に至っています。

さて、なぜこのような話をするかと言うと、隣接分野と言う物は必ず自分が所属する分野との間に深い溝が有り、だからこそお互いが利害関係なく、むしろ共存共栄できる関係であると私個人では考えております。

そんな所から、私は隣接分野間に横たわる深い溝を飛び越えて、広い視野を持ち、硬直化した楽器というジャンルから脱却し、柔軟な頭の持ち主になりたかったのであります。とにかく動かしてみない限り、何も始まらない。。社会科見学の様な物ですかね。

とまあそんな事で覗いた貿易の世界は奥が深くて、想像していたよりも面白い分野で有りました。経済情勢だとか何だとか、その先に何があるかはわかりませんが。

ただまあ、これだけ世の中が閉塞感満載で、年々消費世代の人口ボリュームが尻窄みで有る事を鑑みると、楽器の世界は全く持って明るい兆しが無く、早い段階で隣接分野の可能性や貿易立国日本の置かれた特殊事情に賭けて飛びこんで見た貿易の世界ですら閉塞した状態なのであります。勿論この世界にも隣接分野が有りますからそこを見て回って人と出会っても、各所先があるのか?この先どうなんだい?という感覚が拭えないでいます。

こんな時代だからこそ、今まで通りの沈思黙考もそろそろ終わりにして、何か動き始めてみる・・・というのも重要なんじゃないか?なんて強く思うようになってきました。そもそも世の中のせいにばかりしていては、何よりも面白くない。どうせ不平、不満で終わってしまいますからね。

そんな感じで、そろそろ色々整理して身軽にシンプルに動けるような体制にシフトする時期が来てるなあと感じていて、隣接分野と出自の楽器分野の融合を自分主導で始める時期が来ているのかなと。

さてこの考えを練って乾かして形にして行けるのはいつになるのやら。

更に話は少し逸れてしまいますが、、

Kindred Process from Visual Inclination on Vimeo.



私は本来、こう言う牧歌的な暮らしをギターの世界でしたかったんですが、個人的な事情やら、業界の諸事情やら周囲の何やらは残酷なもので、何を間違えたか真逆の電話とメール着信音が鳴りまくる生活を送ってます。。

ロハスだとか、ノマドなんて言葉も一時期流行りまして、ブラブラしてた事があり、その頃何気にすれ違った、H社かF社に入社していたらお金の面は置いといても、随分それに近い生活を送っていた可能性が有ったかもしれませんが、叶いませんでした。

その時、ディレクターとして来て下さいって言ってくださった長野県F社の社長さんには今でも感謝しています。諸般の事情でそれは実現せず、、後にその社長さんが亡くなったと言う話を聞いた時、遠い目になって、あの日見た長野の山稜に実現しなかった 未来を想ったものです。

それから8年程経って、今、全く形態の違う忙しい生活を数パターンのタスクで処理しながら口を糊して想う事は、色々整理してシンプルに暮らしたいと言うことと、上記にも書いたその繰り返しですが、そろそろ諸般の事情などに妨げられず、主導を自分に取り返す時期に差し掛かって来たかなと、そんな事を常に考える昨今なのであります。
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2014年11月05日

リノベーションの話

いつもながらの話、ビンテージ系(否、ビンテージそのもの)っていうのは、
何がしかの時代感やオーラという物をオーナーの気迫と共に纏っているような気がしてなりませんね。

何でしょうね。この形容しがたい感覚というものは。技術屋とプレーヤーの知と美の絡み合いといった、、、
雰囲気が有るとか、味わい深いとか・・・いろんな表現で曖昧な言い方を一言で纏めてしまう魔法の言葉が

「ヴィンテージ」

誠に甘美に映り、響きにすら感じられる、崇高な言葉。

決して昨日今日ではできない、一朝一夕を超えたある種の普遍性でありながら、
懐かしさ・・・音楽への貢献、文化を編んで行った歴史等々様々な要素がプレーヤーにとって
特別なオーラを漂わせていると言っても過言ではないでしょう。。

なれば、楽器演奏文化の成熟化・多様化が行き着く所まで行き着いたとて、
この手のものが通常の演奏に耐えられる状況を保っている事が非常に希少で、
少しでもプレーヤーの演奏状況というものを整えてやるのも私共に課せられた重要な仕事なんでしょう。

という事で沢山ビンテージギター(一般的な意味でのフェンダー/ギブソン以外でも)を持ちのお客様からの、
レストア依頼そのものは市場ニーズと相まって、今後恒常的にかような仕事も増えてくるのかもしれませんね。

さて、このエレキギターというのは、当時の名品といわれる物の多くは、生産年が古くなればなるほど所謂伝説的な話が付き物で、
なぜ生産されたのか、なぜこのような構造なのか等不明な事も多く、脚光を浴びなくなった後は、人間と同じでどんどん調子を崩していく物です。
子供で言えば青年期を卒業し中年に差し掛かった辺りで体調を崩したから直してくれといった感じでしょうか。

私共ではそんな往年の名品の修復作業という御依頼を割合昔から多く手がけさせて頂いております。

そういった楽器の殆どは、今となっては詳細不明やトレンドではなくなったパーツが取り付けられていたり、、、
なので、新しいPUやパーツに交換したり、ネック/ブリッジを掃除して、
場合によってはフレット/ナットを打ち変えて、弦を張って調整してって・・・

弾くなら弾き続けてあげないと、放っておいた状態を再生させるのは、本当に大変なのですが、
幸いにして、現在はパーツ供給が豊富で、また規格化がずいぶん進んだ時代でもありますので、
工夫次第でトータルバランスが取れていれば、、、
そういう風に手間かけてやると思いの外使える様に音楽的にも生き返るものです。

逆に言うと、手間隙をかけて、かわいがってやらないと、いい面を発揮してくれませんってな話。

話は変わって、いつも思うんですが、私は写真が得意ではなく本当に下手な部類です。
最早、単なる記録・・・位にしか考えていないので、カッコいいアングルだとか、
光の加減がどうだとかあんまり気にして撮っていません。そもそも撮れないって話なんですが。
iPhoneぐらいしかまともな撮影機材は無いですし。

そんな、日々の記事で写真に無頓着の私の撮った写真にすら、日々の作業を行っていると、
時々、修復作業前の写真と、修復作業後の写真に言葉に表せない何というか、、
明らかに後者の方が楽器全体にまだまだ戦えるぜ!といったオーラが感じられる事があります。

これは写真の撮り方で変わっているのでは有りません。
あくまで楽器その物の変化であり、それ以上、以下でもないんです。

大量生産大量消費の時代はとうの昔に終了して久しく、ここの所特に感じることなのですが、
楽器演奏を楽しむ人口のボリュームゾーンその物が、随分ご年配の方へシフトしてきて、
そういった方が昔手に入れたまま仕舞い込んだ楽器というのは相当量眠っていると私は思っております。

それを若い世代へ引き継ぐ(一般的に価値のあるヴィンテージ楽器に留まらず)レストア文化がひとつの世界として
成立する時代がそこまで来ている様に個人的にはここ数年感じるところではあります。

そうやってひとたび蘇った往年の楽器達は、現在売られている昨今の一本とは全く異なる相貌と雰囲気を持っている筈です。

ちょっとやそっとでは真似できない風貌。風格。音色。

そんな楽器を持って現在過去未来すべての音楽を奏でる事はきっと素敵な事ですよ!

又少し話は変わって、先日来たお見積もり依頼の話。

一般的なフェンダー系楽器は適合する部品を手に入れて、自分で色々工夫の上、組み立てれば、取り敢えずギターの形にはなるけれど、細かい所が上手く行かないので、最終調整をしてほしいと言う見積もり。

個人的にこう言うお客さんの見積もりとか実作業が大好きで、予算の縛りとか割とすっ飛ばす勢いの見積もりを書く事が多く、後でもっともらっときゃよかったなー失敗したなーと思う事が。。


言葉は悪いですが、場合によっては事故車をレーシングカーに作り替える作業って言うんですかね。もう一から作った方が速くないかい?的なw

そんな見積もりの最中に思い出した事。

プロのプレーヤーの知人が自分で組んだストラトがどうにもチューニングが合わないって言うので、回ってきた仕事が有りまして、、これが実機を見たら、トラスロッドが折れてネックがアホみたいに順反っていたと言うケース。

結局費用的にネック交換になったのですが、結果採算度外視で全体的に改修の手が入り、これはもうれっきとした事故車をレーシングカーに作り替える様な作業でした。
実はその時の仕事がメーカーを辞めた後、一発目のプロデビュー戦で、それ以降今に続くって感じだったりします。
因みにその楽器は今でもレコーディングで使っているらしいので、徹夜仕事でしんどかったけど意味が有る仕事だったなあと。

それからもう随分の時が経ってしまいましたが、今も作業場にはその時の楽器の写真が貼ってありまして、そんな原体験が有るからか、プレーヤーが自分の好みに応じて組んだだけの、そこには自分ではどうにもできない要望とか夢と希望とか、そんな物が一杯詰め込まれている楽器を仕上げて行くのが、ある種の天命でもある様に感じています。

一から作ったり、修理したり、企画したり、海外OEM関係の仕事も楽しいけれど、原点はここだなとつくづく思い出させて頂いたお見積もり依頼でした。

もし家にそういえば、こんな奴が転がっていたなあ・・・とかいう事であれば、
そういった往年の楽器を一度試しに一線級に使える様レストアしてみるなんてのは如何でしょうか?

もしその作業の途中、お困りの事があれば是非ご相談ください。

ご相談はこちらのメールフォームから!


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2014年10月19日

プロフィール

MASAKI NITANI
1978年生まれ
楽器製作・修理研究工房「IRP Products」主宰
KAERUPROF.jpg

http://i-r-p.net/
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某名古屋の老舗弦楽器製作会社勤務後、レコーディング〜ライブでのギターエンジニア職を経て、
「IRP Products.NET」を立ち上げる。

プロフェッショナル・アマチュア/プレーヤーを問わず幅広い層、沢山のお客様よりご支持を頂き、楽器の修理製作業を営んでおり、その他、貿易関連業務にも 並行して携わって行っております。

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IRPとは「Instrument Repair Plant Products」として、楽器の修理や企画/開発等を、まるで有機的な働きをするプラントの様に自由に柔軟に取り組める場所と言う意味合に規定し、それらはある種のモジュール(技術)の集合体で適時に必要な物を組み合わせる事が出来る、楽器修理等を専門としたマザーボードやCPUの様な環境を指しています。

つまりそのプラントに案件を放り込んだら、処理をして結果を出すと言った演算的なイメージです。実像は偏屈オヤジがあーだこーだ言いながら自由にやっているだけなんで、極めてオーガニックですが。そんな訳で実店舗こそありませんが、このHPをご覧の上、ご依頼を頂けましたら、これ幸いです。

(本音の話)
本当の所は店舗等を構えるのがお客様にとっても御都合のよい事が多々有るのも。。
重々承知しておりますが、時節柄及び周囲の環境を勘案し、

「楽器業界のメインストリームとの関わりや店舗などのハードを持たずにどれだけ出来るか?」

といった、非常に遠大な実験戦略の元、やっていると言うのが正直な所です。
決して楽器業界に対してどうこうの「曰く」が有る訳ではないのですが。

そもそもは、知人の勧めで始めたBLOGがインターネット上の沢山の方のお役に立ったようで、
ボチボチとご依頼とご愛顧頂く様になったのが「IRP Products.NET」の始まり。

元々楽器メーカーに居たと言う事も有って、生業としてはもう随分長くやってるようにも思いますが、
実の所、楽器/修理/企画/開発は氷山の一角で、それ以外の仕事も結果沢山頂くようになりました。

その他、私の所の様なこういう宅配リペア形式で大体何でも基本、受け入れよう/受け入れたいってやっておりますと、時折、あちこちのショップさんで作業を断られたと言う楽器の相談を持ちかけられる事が有ります。

その相談にはプレーヤーさんの要望とか夢とか希望とか色んな物が詰まっていて、、

その要望に全力で答えた事によって、形としてこんな風になったんですけどって、手渡した瞬間、物凄く歓喜に満ちた顔で演奏して下さる姿を見ると、IRP Productsは世間に居ていいんだと言うか、存在を許されて社会に有っても良いんだと思える瞬間でもあり、私自身の喜びの瞬間でもあります。

だから今日も明日も明後日も、常に修理や手法や思考やその為の積み上げなどの技術の研鑽を続ける事が出来るのだと感じています。

そして、本当にいつも多くの優秀な友人や家族や協力会社様の力を借りていますが、 私1人でその全てをコントロールしています。そんな訳でいつも何かバタバタとしていて、開発した製品やリペアサービスを売り込む営業等は殆ど出来ず、つまり依頼が有ったらその時のみのワンメイクに近い状態です。例えば製品で有れば、製作後、自身で気に入った物は複数台製作して、友人に配ったりなんかして、結局あんまりお金は手元に残りません。 これだけでも事業としてみたら十分に失格です。ですが、本当に良い音が出た時は、こんな小規模な事業に協力して頂いた友人達と分かち合う事で音楽や友人に対して恩返しをしている、そんな気持ちで居ます。

それらの信念を持ち、常にプレーヤーさんの良き相談相手で有りたいと言う事と、最近は特に「話をよく聞く事」、これを念頭に置いておりまして、後は、「是は是、非は非」、出来る事は精いっぱいやると言った様な感じで、のびのびとやっていけたらとっても理想的で幸せな事だと思っております。

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連絡先(メイン作業場)
552-0003 大阪府大阪市港区磯路2-4-6
(作業場自体は住居を兼ねている為非公開とさせて頂きます)
作業中や緒雑務等に忙殺されている事が多く、殆ど電話に出られない事と、
また各種セールスの電話が増加してしまった為、ご連絡は基本的にメールにてお願い致します。
電話番号はお問い合わせ頂いた際の返信メールに記載が有りますので、そちらをご確認ください。

土日祝日は基本的に集中作業日の為、メールの返信が出来ない可能性が有ります。
予めご容赦のほどお願いいたします。

メールフォームはこちらから
http://i-r-p.net/contacts

SKYPEにも対応しておりますので、ご利用になられている方はご連絡可能です。
(但し、日中は作業等で即時お返事が出来ない事がございますので、予めご了承ください)

SKYPE ID:shin0745

2014/10/19プロフィール全面改定
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2014年07月14日

トーカイストラトキャスターミッドブースター搭載とノイズ対策の話

今回のご依頼は神奈川県S様からのご依頼で、トーカイ製ストラトキャスターモデルのPU交換及びミッドブースター搭載作業を行いました。

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こんな感じのギターです。
安価なモデルとお客様はおっしゃられてましたが、とは言えそこは流石国内産。ちゃんと作るべき所はきっちりされてました。良質なモデルかとは思いますが。。

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国産モデルはどうにも電気パーツが駄目になりやすい物が使われていたり、なんか大事な帯域がスコンと抜けたPUが載っている事が多いのが残念ですね。。まあPUの音に関しては感性の問題なので、好きな人は好きかもって話ですが。

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で、今回はPU交換と言う事でお客様指定により手配したPUがコレ。フェンダーヴィンテージノイズレスですね。
物凄いパワフルなPUなのにノイズが少なくて、私個人的には非常にお気に入りのモデルです。今回はこれにミッドブースターを組み込むと言う指定の作業でした。

IMG_3617_R.JPG → IMG_3670_R.JPG
早速ばらして各部フィッティングの具合を見て行くと、、どうにもPUキャビティーが浅すぎて今回のPUが載せられません。じゃあ掘るかって感じでざっと切削加工した後の絵が右の写真です。

加工中の画像は結局撮り忘れてしまいました。まあ早い話が、木工用ルーターで必要サイズ掘り下げたと言う事。このフェンダーノイズレス系は本体に結構な厚み(高さ)が有る為、国産ストラトに限って言ってもポン付け出来ない事が多い様に感じます。

その後、むき出しの木部にシーラー(目止)を打ってから、外来ノイズ防止用の導電性塗料を散布します。このBLOGには沢山この作業が出てくる割にはあまり説明を書いた記憶が無いので、これが塗られていると一体どういう効果が有るのか簡単な説明を。(時折ご質問も頂きますし)

現代の様々なエレキギターが使われるシーンでは、空間中に様々なノイズの元になる電波や電磁波が存在します。幾つかの例を挙げると、携帯電話の電波や蛍光灯、エアコンやPCの電源ファン等々。これらの電磁ノイズがPUや楽器内部の信号線を直撃し、アンプによって増幅されて音として出現するのが「ノイズ」です。ギタリストにはお馴染みの「ジー」とか「ビー」とか言う音ですね。

これらの電磁波ノイズはエレキギターが開発された50年代には殆ど存在しなかった物ばかりでした。その為、あまりノイズ対策をなされておらず、今でも開発当時の構造をあくまで再現しているモデルは欠点をも引き継いでしまっています。(その点ギブソンのセスラバーさんは偉い!50年代の後期にはこの電磁波ノイズを遮断するシステムを開発した訳ですから。その製品の名前がお馴染みのハムバッカーと言います。)

では外来ノイズを防ぐためにはどうしたらよいのか?と言う研究は随分昔から進められており、紆余曲折を経て「キャビティー等へアースに繋がった金属ボックスを埋め込んだり、又は金属箔を使用して、シールドボックスを形成し、防御壁として信号線を閉じ込めて、外来ノイズの侵入を防ぐ」という解決法が編み出されました。

正確にはどなたが一番最初に導電性塗料を使って始めたのかは存じ上げませんが、加工等の容易さと、かなりの効果が有った為、この塗料を使った手法は画期的なノイズ対策法の決定打となり世の中に広まって行きました。今やハイエンドなギターでこの処理が施されていない物は皆無です。

但し、効果が有れば副作用もありまして、ノイズが減ると言う事は、若干高域のキラキラした音色の部分をスポイルしてしまう為、その辺はまた別の工夫が必要になります。

簡単な説明ですが、実際の作業はと言うと、、、
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こんな風にマスキングをして、導電性塗料を筆で塗布していきます。
この塗膜を正しくアースに接続してやる事で、信号線を全てアースボックスによって囲ってしまう訳ですね。

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ピックガード裏にはアースボックスの蓋の機能として、アルミシートを貼り、アッセンブリーを全て組み込みます。ここに塗料を使うとPGが歪んでしまう恐れが有りますのでアルミシートを使用します。

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ミッドブースターはいつも通りこんな感じ。今回はブースターのバイパススイッチをトーンポットに同梱させました。これによりパッシブでも使用可能です。

ここまで作業すれば、後は型通りの組込と調整ですね。

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今回ナットの状態が芳しく無かった為、溝と外形を調整しました。

IMG_3648_R.JPG → IMG_3652_R.JPG
その他調整にあたり、ネックポケットに残っていた生産時のマスキングテープの粘着と思しき汚れを掃除し、平面に調整し直しました。これやっておくと結構ご機嫌な鳴りに変化するので、個人的には手を入れる事の多い場所です。

組み込んで調整したら。。
IMG_3682_R.JPG IMG_3683_R.JPG IMG_3685_R.JPG
完成です。
バッテリーボックスはお馴染みの場所へ取り付けてあります。

こんな感じで作業が終了しました。

ミッドブーストの掛り具合や鳴りに関しても、中々ご機嫌なドライブサウンドが得られました。マスタートーンのスイッチポットでブースターをオフれば、パッシブサウンドも出力できますので、色んなシーンで活躍できる一本に仕上がりました。

ざっと作業を一連の記事に仕立ててみましたが、如何だったでしょうか。

ご興味のある方は一度是非ご連絡を頂ければ幸いです。

神奈川県S様ご依頼ありがとうございました。
またのご愛顧お待ちしております。
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2014年07月10日

ギブソンカスタムショップレスポールのPU交換作業や色々

今回は大阪府のT様からのご依頼でギブソンカスタムショップ製レスポールのPU交換作業を行いました。

お預かりしたレスポールはどんな物かと言うと、、
IMG_3322_R.JPG
本当に凄い杢の入ったメイプルトップですね。真っ当に行って販売価格は幾らの楽器だったんでしょうか。
良質な木材が使われている所謂プレミアムグレードな個体でした。

今回の依頼PU前後交換とヴォリュームポットの交換です。
そこに至るまでの経緯は次の通り。

レスポールのスタンダードなコントロール回路には500KΩのVOPOTが使用されていますが、この使用部材である所のCTSのポットは、ノブ的にはVOゼロの際でも、内部の残留抵抗(数Ω〜50Ω程度)が大きく残っていて、音量がゼロにならない事が有ります。

特にこれが問題として表れる顕著な例が、レスポールのスタンダード回路で、PUセレクターをハーフトーンポジションで片方のVOを絞って有る場合のみ音が漏れると言う症状です。

これは単純に2系統ある内、ゼロのVOPOTに残留抵抗が有る為で、ハーフトーンの際、もう1系統のVOPOTの抵抗が合成抵抗として加算されてしまい、信号ラインから見た回路上、信号が残留抵抗分アースから浮いてしまう為に起こる現象です。
気になる方は合成抵抗の計算等をしてみて下さい。残留抵抗が50Ωもあると結構な合成抵抗値が出ます。。

又、プレーヤーの方で音漏れが気になる方はぜひ交換を!

これらを回避する為には残留抵抗が無いVOPOTを使用するか、配線を改造するしか手は有りません。
今回はあくまでレスポールの基本回路を再現すると言う要望でしたので、当然選択肢としては前者を選択する事になります。
そもギブソンが最初からちゃんと選別したVOPOTを使っていればこんなことにはならない訳で。。。

まあそんなこんなで手配したロングシャフトのVOPOTなのですが、やはり同じくCTS製を選択しました。
IMG_3364_R.JPG
なんだかんだ言っても耐久性は非常に高い事と、残留抵抗さえなければ間違いのない電気部材ですのでね。
私は過去の経験からあまり好きではないのですが、エレキ業界と言えばコレと言うぐらいスタンダードな物なのでどうしても外す訳にはいきません。

次はPUに特殊な加工を施します。
IMG_3332_R.JPG
今回載せ替えるのはコレ。今やダンカンのスタンダードですね。

これを有る特殊な作業をし、調整してから楽器にマウントします。
IMG_3334_R.JPG
こんな感じですね。電気分解だとか、イオンだとか何だとか書き始めるとキリが無いので、何やってるかは企業秘密と言う事で。

IMG_3335_R.JPG
で色々各部調整やらエイジド加工やらを行って。。PUは完成。

IMG_3336_R.JPG
楽器側はシールディング加工を施し、回路配線もプリビルドしてから仕込みます。

IMG_3367_R.JPG
今回使ったコンデンサは私のお気に入りのオレンジドロップのとある品番のものですし、トーンポットにもバイパス出来るフルトーンをストックの物を加工して仕込みました。これだけでももうぜんぜん別物です。

IMG_3369_R.JPG
次はナット交換をして、、、、

IMG_3370_R.JPG
ブランクの牛骨材から削り出します。これがまた5年物のオイルボーンでとうとう5年物のストックが尽きました。まあ都度都度仕込んでますんで在庫は問題ありませんが。

で交換後のアップ写真が無いのですが、様々な所を調整して、、
IMG_3383_R.JPG
完成です!

完成後、弾いてみましたが無茶苦茶カッコいいレスポール然とした音が出てまして、これならジャズでもサザンロックもハードロックも何ら問題無くイケる感じでした。
面構えも良いですしね。

と言った様な所で本日はここまで。

大阪府T様
ご用命有難うございました。またのご愛顧お待ちしております。
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2014年06月07日

クレイジーなFUZZ作成記

前回のサンダーバードの修理仕事を頂いたO氏より、別のエフェクト作成の依頼を受けておりました。
で、その依頼内容は

何処までもサイケデリックで、踏んだら「ピー ピャー ガー」と言う音がする物

と言うまことにアレな内容

とは言え、先ずはピーとかガーとか言わす前にベースになるファズの音を作らなきゃなりません。
その為の、資料音源がコレ。


今の基準のファズの感覚から行くと、国産サイケの王道みたいな音。

60〜70年代辺りの日本のスタジオレコーディングシーンについての歴史に関する文献や資料を紐解いていくと、どうもこれらのファズに関しては国産ファズの名器「ハニーファズ」や「シンエイファズ」辺りの物が沢山の音源で使われていたとされています。
またスタジオミュージシャンと言う言葉も未だ無く、奏者の数もそれほどいなかった時代、ファズと言う商品もこの2機種ぐらいしかなく、機材がみんな被ってしまった為、似たような音色の音源が多数存在する結果となったようです。今ではそれが一つのGSサウンドとして連想される音色に定着しているのですから、まあ時代を象徴する音であったのは間違いありません。



コレなんかも良く似た音がしてますね。

当時は海外製品のエフェクターはあまりに高価な為、手に入れられた人も限られていたようですね。日本で一番最初にファズボックスを使ったのはかまやつひろし氏だったと言われてますが、当時香港にそういった欧米の楽器や機材などが貿易途上で通過するルートが有り、自分たちで買付けに行っていたんだそうです。

又これは別の話では有るのですが、日本製のファズやエフェクターはOEMブランドとして沢山輸出されていたそうで、その中の一つ、ジミヘンドリックスが使った「ユニヴァイブ」、これがシンエイ製で現在コルグの監査役で有る三枝文夫氏が設計開発した物であった事は今でこそ有名な話ですが、情報の乏しい時代、それはそれはミステリーに包まれた伝説的なエフェクトでした。


69年ウッドストックの伝説的な名演の陰で、日本人技術者が作った音が使われていると言うのは、大変な尊敬の念と共に、日本人技術者としては誇らしい気持ちになる話ですね。

とまあ今度は自分が作る物に話を戻します。

ファズがピーだとかピャーって言う時は大体回路が発振(わかりやすく言うとハウリング)してる訳ですが、今回ファズ部分にネガティブフィードバック回路を組み込めばいいだろうと思い立ち、色々トランジスタをこねくり回して設計していたのですが、
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試作していた時から、「今回これ結構良い音するわー」と思った関係上、多少の量産が出来る様に版下を起こし、プリント基板で製作する事にしました。

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で、出来あがった基板にこんな感じでザクっと基板に部品を載せました。全部手作業と言う効率の悪さ。

そんなこんな試作を繰り返している頃に、どうも東芝のトランジスタで2SC1815がとうとうディスコンになるとの情報が。。。

2SC1815.jpg

もう何年も前から新規設計非推奨銘柄に入っていたの知ってましたが、とうとうこんな時代が来るとは。。多くの人がそうであるように、私もこれでトランジスタのイロハを学んだので、寂しさと共に2SC1815のお墓を作って弔ってあげても良いかな?位の気持ちになった程です。よく焼き殺しましたしね。。
フェアチャイルド辺りが代換え品種を作っているので機能的には困らないのかもしれませんが、、、

ってな余談は置いておいて、今度は出来あがった回路を入れる箱のデザインを。
IMG_1646_R.jpg
ファズの癖につまみやコントロールが多くて、なんかロックじゃない感じがしてしまっているのですが。。
まあこれもコントロールを色々できる様にという話。本当はシンプルな方が良いんですけどね。

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ガツンとケース加工!何となく完成が見えてきた。

IMG_1753_R.jpg

後は定型通り組み込んで。。
IMG_1753_R.jpgIMG_1760_R.jpg

完成!
IMG_1761_R.jpg
ラベルだとか何だとかは全部フリーデザインでやらせて頂きました。
エフェクターにQRコードを埋め込んでるんですが、これは初の試みでして、例えばライブ現場でマニュアルが必要になればスマホでポンと読み込んで、マニュアルが読める様にするとか、まあいろんな発展性が有るので、今回実験的にデザインに組み込んでみました。まあまだそこまでのサービスの組込は出来てないんですけどね。

と言った様な所でファズ製作終了
で、出来あがった後の音が無い!
残念。

その後、使ってくれてるんだかなんだかよく解りませんが、依頼主の彼らは

こう言う方たちです。

試奏動画が届きました!

単体で聞くと冒頭のサイケ+発振物なんですが、彼らの機材に入ると、どうもエクストリームな感じの音で演ってるようですね。

未だ基板が2セットほど残っておりますので気になった方はぜひご連絡下さい。

O様
ご用命有難うございました。


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2014年05月31日

グレコサンダーバードボディー割れ修理と膠(にかわ)の話

今回の記事はグレコのサンダーバードの修理について面白い症状の物だったので記事にして残しておきます。

東京でガレージノイズバンドをやっているO氏より、「メインで使ってるベースのボディーが割れてるかもしんないから、ちょっとメンテナンスがてら見て」ってて言う連絡が入ったのが始まり。

サンダーバードとかファイヤーバードって、材質的にも構造的にも、確かにボディーの接ぎの部分が割れやすいよなー等とはおもうのですが。
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実機を見たらこれこの通り。スタッドとブリッジ、メタルエスカッションとピックアップとで、辛うじて繋がっている状態でした。
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当然外すとバラバラに。

別角度から
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まー見事に割れ(と言うか接ぎの部分の剥がれ)てますね。

取り敢えず養生をして接着準備に入ります。
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これ、木部がダメージによって割れたのではなく、生産当時に使われた接着剤の劣化が原因ではと疑われる症状です。

と言うのも破断面を触ってみると接着剤が全面泡立ったような状態になっており、明らかな接着層の劣化が疑われる状態でした。生産当時に使われた接着剤は匂い等から判断して、恐らく膠系の物が使われており、又、ホルマリンが添加されている物とみられ、その添加量が多すぎた為か、経年変化で接着層が破壊されてしまったと推測できます。

そも、膠(にかわ)とは何か?
動物の臓物や魚の皮など、所謂動物性たんぱく質を煮出して作る、伝統的な接着剤の一つで、5000年前にはすでに使用された例が有る事を示す壁画などの資料が残っているそうで、古くはエジプトの壁画などにも使用されている事で有名です。
またこれらの発展的な製品として身近な物では、、、精製された物が食品用のゼラチンとして使用されている為、一般的なゼリーなどの食品として口に入っている物でも有ります。その他ではオブラートなんかも有名な使用例ですね。

では、膠にホルマリンをなぜ添加するのかと言う話ですが、一般的な膠として売られている三千本等の膠製品は固形物として販売されています。

これを使用の為に水やお湯で溶いた膠溶液はたんぱく質のゲル状に濃度調整をしてから使用するのですが、この材質上、細菌が繁殖しやすい培養基のような物ですので、空気中や溶いた水、そも自己が持っている細菌により、腐敗及び品質及び接着強度が変質しやすいのが特徴となり、これが膠が使いにくいと言われる所以です。これを避ける為に、石炭酸などの殺菌剤、防腐剤等を僅かに膠溶液に添加する事があり、その防腐添加材が楽器業界では「ホルマリン」が良く使用されるという訳です。また、接着作業以降でも、木材が湿気を発したり、接着層が湿気を被って、膠が緩んだ際の腐敗を防ぐ意味もあります。

しかしながらホルマリンは水溶性の添加剤でしか有りませんので、自身には接着力を高める能力はなく、あくまで溶液使用中の接着剤の変質を防ぐ一つの成分でしか有りません。つまり添加しすぎると、薄めた接着剤を使っているのと同じ事になる訳ですね。またホルマリンその物が変質した際に、接着層を破壊してしまうという側面もあるようです。

今回のボディー割れの原因はこう言った事が原因の一つで接着面が緩んだ所に何らかの衝撃が加わり、接着層が剥離してしまったのではないかと推測できます。

楽器の世界は膠が高級で、それ以外は駄目だと仰られる方もいらっしゃいますが、使用用途と使い方次第かなと私は考えておりますが、例えば将来的に修理する必要が生じやすいアコースティック系楽器のネックジョイント/表板/ブリッジ周辺部分は水で溶ける膠を使うべきですし、今回の例では、将来的にも絶対に割れて欲しくない個所の修理ですから、勿論エマルジョン系の接着剤を使用すべきとの結論です。

昔、お世話になった方で、オーストリアのクラシックギターの製作家の方とお話しさせて頂いた事が有るのですが、その方は「接着剤には膠を使うんだけれども、所謂三千本と言った非精製製品ではなく、食品用の精製ゼラチンを使うのだ。また防腐剤にはホルマリンではなく石炭酸を使うし、濃度と鮮度には非常に気を使う」と仰られていました。これが一つの製作家の考え方。

私個人は、基本的に後の修理のし易さと、剥がれて欲しくない部位と音色の兼ね合いを見た上、バランスを取ることが重要であると言う結論の為、この部位には絶対コレという使い方はしない感じです。これも一つの考え方。

また、懇意にさせて頂いているとあるリペアマンの方には、絶対に膠は使わない。と言いきる方もおられます。やっぱりこれも一つの考え方。

それぞれ製作家の考え方は様々ですが、ヴァイオリン属やクラシック/フォークギター属、ウクレレ属といった軽量且つ、各部材を接着で構成する部位の多い物、弦振動を音色に変換する響板が薄い物は、音色の何パーセントかを占めるファクターとして、接着材単体の硬度も寄与していると考えられます。

結果/現象に対し、何をどう自分の考えの主軸に置くかと言ったところでしょうか。

とまあ接着剤の話を長々としても仕方ありませんので実際の接着作業へ。

上記の考えの中から選択肢として、今後もう剥がれて欲しくない部位の修理ですので、今回はフランクリン社から発売されているタイトボンド(エマルジョン系)を使用します。
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楽器修理製作の世界や家具の世界ではお馴染みの接着剤ですね。
これは一般的に日本で有名な白い木工用ボンドに比べて、硬化後の硬度が高く、ソリッドな伝達効率を持つと考えられます。もし両方お持ちの方が居れば、割りばしの表面にでも双方塗ってみて下さい。乾いた後、ガラスコップをその割りばしで叩いてみたら各々音色の違いが良く解ります。良い/悪いではないですが。

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これを接着面を整えてから両面に塗布し、接着します。。。
が、接着中の画像を撮り忘れてしまいました。滅多に見れない様な画でしたが勿体ない話。。

で、
IMG_3397.JPG
接着のち割れた部分を、面相筆にて部分着色し、シーラーとラッカークリアを盛り付けて・・・

IMG_3398.JPG
表面研磨。

IMG_3403.JPG IMG_3407.JPG

組み込んだら完成です。

IMG_3404.JPG

今回は部分塗装に留まりましたが、破断部分はそれほど違和感なく、よく見たら解る程度にまで修復できました。

こんな所で修理と調整完了です。

で、オーナーのO氏はNOISE A GO GO'Sと言うバンドをやっており、ノイズ&ハードコアパンクなバンドの方です。

O様 ご依頼ありがとうございました。またのご愛顧をお待ちしております。
posted by IRP Products at 21:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽器リペア関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする