いつもながらの話、ビンテージ系(否、ビンテージそのもの)っていうのは、
何がしかの時代感やオーラという物をオーナーの気迫と共に纏っているような気がしてなりませんね。
何でしょうね。この形容しがたい感覚というものは。技術屋とプレーヤーの知と美の絡み合いといった、、、
雰囲気が有るとか、味わい深いとか・・・いろんな表現で曖昧な言い方を一言で纏めてしまう魔法の言葉が
「ヴィンテージ」
誠に甘美に映り、響きにすら感じられる、崇高な言葉。
決して昨日今日ではできない、一朝一夕を超えたある種の普遍性でありながら、
懐かしさ・・・音楽への貢献、文化を編んで行った歴史等々様々な要素がプレーヤーにとって
特別なオーラを漂わせていると言っても過言ではないでしょう。。
なれば、楽器演奏文化の成熟化・多様化が行き着く所まで行き着いたとて、
この手のものが通常の演奏に耐えられる状況を保っている事が非常に希少で、
少しでもプレーヤーの演奏状況というものを整えてやるのも私共に課せられた重要な仕事なんでしょう。
という事で沢山ビンテージギター(一般的な意味でのフェンダー/ギブソン以外でも)を持ちのお客様からの、
レストア依頼そのものは市場ニーズと相まって、今後恒常的にかような仕事も増えてくるのかもしれませんね。
さて、このエレキギターというのは、当時の名品といわれる物の多くは、生産年が古くなればなるほど所謂伝説的な話が付き物で、
なぜ生産されたのか、なぜこのような構造なのか等不明な事も多く、脚光を浴びなくなった後は、人間と同じでどんどん調子を崩していく物です。
子供で言えば青年期を卒業し中年に差し掛かった辺りで体調を崩したから直してくれといった感じでしょうか。
私共ではそんな往年の名品の修復作業という御依頼を割合昔から多く手がけさせて頂いております。
そういった楽器の殆どは、今となっては詳細不明やトレンドではなくなったパーツが取り付けられていたり、、、
なので、新しいPUやパーツに交換したり、ネック/ブリッジを掃除して、
場合によってはフレット/ナットを打ち変えて、弦を張って調整してって・・・
弾くなら弾き続けてあげないと、放っておいた状態を再生させるのは、本当に大変なのですが、
幸いにして、現在はパーツ供給が豊富で、また規格化がずいぶん進んだ時代でもありますので、
工夫次第でトータルバランスが取れていれば、、、
そういう風に手間かけてやると思いの外使える様に音楽的にも生き返るものです。
逆に言うと、手間隙をかけて、かわいがってやらないと、いい面を発揮してくれませんってな話。
話は変わって、いつも思うんですが、私は写真が得意ではなく本当に下手な部類です。
最早、単なる記録・・・位にしか考えていないので、カッコいいアングルだとか、
光の加減がどうだとかあんまり気にして撮っていません。そもそも撮れないって話なんですが。
iPhoneぐらいしかまともな撮影機材は無いですし。
そんな、日々の記事で写真に無頓着の私の撮った写真にすら、日々の作業を行っていると、
時々、修復作業前の写真と、修復作業後の写真に言葉に表せない何というか、、
明らかに後者の方が楽器全体にまだまだ戦えるぜ!といったオーラが感じられる事があります。
これは写真の撮り方で変わっているのでは有りません。
あくまで楽器その物の変化であり、それ以上、以下でもないんです。
大量生産大量消費の時代はとうの昔に終了して久しく、ここの所特に感じることなのですが、
楽器演奏を楽しむ人口のボリュームゾーンその物が、随分ご年配の方へシフトしてきて、
そういった方が昔手に入れたまま仕舞い込んだ楽器というのは相当量眠っていると私は思っております。
それを若い世代へ引き継ぐ(一般的に価値のあるヴィンテージ楽器に留まらず)レストア文化がひとつの世界として
成立する時代がそこまで来ている様に個人的にはここ数年感じるところではあります。
そうやってひとたび蘇った往年の楽器達は、現在売られている昨今の一本とは全く異なる相貌と雰囲気を持っている筈です。
ちょっとやそっとでは真似できない風貌。風格。音色。
そんな楽器を持って現在過去未来すべての音楽を奏でる事はきっと素敵な事ですよ!
又少し話は変わって、先日来たお見積もり依頼の話。
一般的なフェンダー系楽器は適合する部品を手に入れて、自分で色々工夫の上、組み立てれば、取り敢えずギターの形にはなるけれど、細かい所が上手く行かないので、最終調整をしてほしいと言う見積もり。
個人的にこう言うお客さんの見積もりとか実作業が大好きで、予算の縛りとか割とすっ飛ばす勢いの見積もりを書く事が多く、後でもっともらっときゃよかったなー失敗したなーと思う事が。。
言葉は悪いですが、場合によっては事故車をレーシングカーに作り替える作業って言うんですかね。もう一から作った方が速くないかい?的なw
そんな見積もりの最中に思い出した事。
プロのプレーヤーの知人が自分で組んだストラトがどうにもチューニングが合わないって言うので、回ってきた仕事が有りまして、、これが実機を見たら、トラスロッドが折れてネックがアホみたいに順反っていたと言うケース。
結局費用的にネック交換になったのですが、結果採算度外視で全体的に改修の手が入り、これはもうれっきとした事故車をレーシングカーに作り替える様な作業でした。
実はその時の仕事がメーカーを辞めた後、一発目のプロデビュー戦で、それ以降今に続くって感じだったりします。
因みにその楽器は今でもレコーディングで使っているらしいので、徹夜仕事でしんどかったけど意味が有る仕事だったなあと。
それからもう随分の時が経ってしまいましたが、今も作業場にはその時の楽器の写真が貼ってありまして、そんな原体験が有るからか、プレーヤーが自分の好みに応じて組んだだけの、そこには自分ではどうにもできない要望とか夢と希望とか、そんな物が一杯詰め込まれている楽器を仕上げて行くのが、ある種の天命でもある様に感じています。
一から作ったり、修理したり、企画したり、海外OEM関係の仕事も楽しいけれど、原点はここだなとつくづく思い出させて頂いたお見積もり依頼でした。
もし家にそういえば、こんな奴が転がっていたなあ・・・とかいう事であれば、
そういった往年の楽器を一度試しに一線級に使える様レストアしてみるなんてのは如何でしょうか?
もしその作業の途中、お困りの事があれば是非ご相談ください。
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