到着した日、滅茶苦茶曇ってたんですよね。。画像が滅茶苦茶暗いんですが、綺麗な無垢のフレイムメイプル2Pボディーでボルトオンネックのジャクソンです。ネックはジャクソンの得意のオイルフィニッシュ(的な)仕上げとなってます。
先日のシャーベルMODEL6はスルーネックでしたが、こちらのジャクソンブランドの物がボルトオン・・・・
ジャクソン社の当初は、シャーベルブランドがボルトオンネックで、ジャクソンブランドがスルーネックと言う作り分けが主流だったと記憶していますが、いつの頃からかブランドや仕様が入り乱れてしまっていたようですね。(前回のシャーベルに関しては日本国内で生産された物だったからかもしれませんが)
今回ご用命頂きました作業内容は、
前回にも少し触れました様に、ケーラータイプのナットからフロイドタイプのナットへ換装作業とPU交換、そしてフロイドローズ用イナーシャブロックのワンオフ製作と言うご要望を頂きました。
この写真をご覧頂くと判ります様に、ケーラータイプのロックナット?機構は、所謂普通のギターのナットを交換せずに追加工で取り付ける事が可能。。と言う物なのです。
つまり、通常のナットとロック機構を同居させている訳ですね。
この構造の利点は開放弦の音色は通常のギターと変わらないまま、弦をロックしてチューニングの安定を図る事が出来るという訳です。(プロギタリスト鈴木茂氏のギブソン335にも取り付けられてますが、アレはこういう効果を狙っての事でしょう)
所が今回の楽器の様に、フロイドローズ搭載でダイナミックにアーミングした場合、ナット部分で弦の稼動摩擦が大きくなり、プレイに集中出来ない程ピッチが狂う事もあります。(と言っても一応はヘッド側でロックしているのでシンクロナイズドトレモロ程ピッチはズレ無いんですが)
そんなピッチの狂いが気になって仕方が無いとオーナ様がお悩みでしたので、今回フロイドローズ用のナットへ交換する事になりました。
上記の話の裏返しになりますが、フロイドローズ用のナットの場合、0フレットで弦をロックしてしまう為、弦の稼動摩擦部分が限りなく0になり、チューニングが安定すると言う訳ですね。但し開放弦の音は金属的になりますよ。と言った所ですか。
早速通常のナットとケーラーナットを外してみました。
このナットを外した周辺部を切削加工してから、メイプル材で下駄を履かせて底上げし、フロイドローズのナットを取り付けられる様にする訳ですね。
文章で書くと2行ですが、この加工結構大変でした。。。。
この位の大きさのメイプル材をナット部分に埋め込む訳ですね。これはまだ仮なので木取りの方向は違います。
これがその大変だった加工中の写真です。
画像の左側、ネックの角度と元のナット溝の深さに合わせて溝を一段削り込んであります。
最初は元のナット溝を埋め木してから、角度を削り出して下駄を履かせようと思ったんですが、そうすると、埋め木が二枚になって強度や見た目が悪いなーと言う判断から、今回はこう言う方法を取る事にしました。
右の画像は、削り込んだ溝にぴったり収まるようメイプル材を削り出して接着している写真ですね。途中の工程の写真は全く残ってませんでした。因みにクランプを掛ける際、工具でネック裏に傷を付けない様に当て木とノンスリップシートを挟んであります。
この下駄を作るにあたって、ロッドナットに工具が入るようにパイプレンチのサイズ分だけ「工具の逃げ」をあらかじめ掘り込んで有ります。
そしてなぜ、下駄程度にこんな厚いメイプルを貼ってるかと言いますと・・・・規定値近くの薄さで作って貼ろうとして、仮にクランプを掛けたら苦労して整形したメイプル材が割れてやり直しました。。泣きました。(意味わかります?)
そして、その後、メイプルブロックを規定の高さ・形状にまで削り出して、概ねこの辺の木部加工は終了ですね。
ヘッドトップから連続していく下駄の側面に関して、オーナー様は無垢のままでも良いと仰ってたんですが、どうせなら。。と、こちらの判断で部分塗装させて頂きました。
グリップ側面はこの後、オイルフィニッシュの後、ウェザリング(汚し)を行ったのですが、その写真もどこかへ行ってしまいました。。。
そして、やっとこさ、フロイドローズ用のナットの取り付けですね。今回は上締めタイプなので取り付けはさほど苦労しません。
本当はもっとこの辺、接地面積における音色・・・等々を突き詰めて研究したいと思って自分の楽器ではあれこれやっているのですが、まだまだお客様の楽器でやる訳には行きませんので、ここは素直に取り付けます。
この時点でフレットの擦り合せも行ってあります。
ネック周りはこの辺で一旦終了
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そして今回頂いた依頼の中で一番体力的に大変だったのは、フロイドローズ用のブラスブロックをワンオフで作った事でしょうか。
と言うのも、このオーナー様と前に何かの機会にお話していた時に、私が「シンクロのイナーシャブロックを自分で作った事有りますよ」と言っていた事を覚えていらっしゃった様で、「それならフロイド用のも作れませんか?折角だから試してみたいんです。」と、とても有り難いお話を頂きましたので、製作させて頂きました。
色んな話し合いの末、数ある材料の中から今回はブラス材(真鍮)を選んだ訳ですが、切削性が良いブラスと言えど金属です。
そして私はフライス盤など所有しておりません。と言う事で自分用に作った時と同様、手で削り出しました。。。。
ネット上の金属密度の資料からブラスの質量を調べておいて、ブロックの体積に当て嵌めてみる。。。なんて作業を経て、ある特定の重さになる様に設計して削り出しました。
ボール盤で正確な取り付け穴を開け、タップでネジを切っていきます。。。
この時点で予測重量にほぼ近い結果が得られたので、個人的には中々良い経験になりました。(高精度の秤が欲しい。。)
そして致命的なブロック単体での写真の撮り忘れ(笑)泣けますわ・・・
でもまあ組み立て前の写真が残っていたので良しとしましょうか。
フロイドを組み立てて、スプリングを掛けるとこんな感じですね。
弾いた感じアーミングが少し重くなりましたが、ピッキング時のアタック感とサスティンは物凄く延びました。フロイドの場合、ちょっとでもアームダウンをするとガクンと音量が下がってしまいますが、このブロックですと、その辺り少し改善されます。後の使い方はプレーヤーさん次第!ピッキングニュアンス等々の使い心地に関しては、使い込んで頂いてレビューをお待ちします。
しかしまあ、いつもながらにあまり写真が残っていないのでかなり伝わりにくい話ばっかりになってしまってますが。。。。
次はPU交換に行きましょう。
ジャクソンオリジナルのPUキャビティーで特徴的な所は、まるで他のPU搭載を拒むかの様に、ジャクソンオリジナルPUの形状に合わせて作られてます。この形状のキャビティーですとリプレイス出来るPUは限られてきます。(EMG、ダンカンのJBjrなどの一部のモデル、シェクター系などの配線取り付け用の耳が無いモデルに限られる)
今回はフロントPUにディマジオ社製「Pro Track」と言うPUを搭載する事になったのですが、これはボディーを加工しないと取り付けられないんですね。PUの耳と言いますか、配線が出る部分の逃げを作ってあげないといけません。
と言う事で現物合わせでトリマー用ジグを作り、フロントPU部分ボディー加工を行いました。PUの耳の部分だけ拡張してあげた訳ですね。
これ文頭の方にも書きましたが、メイプルボディーで切削加工中物凄い甘い良い香りがしました(笑)
その後はきっちりシールディング用導電性塗料を塗布して、アース線を配線します。
配線は元々それほど雑に施工されては居ませんでしたが、国産のポット・レバースイッチが付いていたので、ここもオーナー様より交換指定がありました。この辺りはまあ難しくもなんとも無いですね。こちらのキャビティーにも導電性塗料を塗布してアースに接続します。
そして色々ネックポケットの擦り合わせ等、細部に渡る調整を行ってから組み込んで完成!今回PU関係のパーツは全て白で纏める様にとのご希望で、PU等御支給を頂いておりました。
写真が暗いのが残念なんですが、非常に綺麗なフレイムメイプルにワインレッドのボディーなんですけどね。。これ。完成が夕方だったのが残念。
肝心の改造点、ロックナット部分も良好、フロイドブロックも(個人的に)物凄い良い結果を生んでます。交換したPU郡との相性もかなり良い様で、物凄いHR・HMギターになりました。
オーナー様からのレビューでも
「いやー物凄いですね。ここまで行くとは!」
と言う喜びの声を聞かせて頂きました。
ブロック削りは大変でしたが、このレビューを聞いてホッとしました。まだまだ勉強しなきゃ駄目な事は沢山ありますが、今回はひとまずここまで!
しかし写真って撮ったつもりでも全然撮ってないもんですね・・・
今回のお客様のHN:じょん様のHPはこちら
Jackson Factory
http://www7.plala.or.jp/charvel/
関連リンク
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