兵庫県のH様より、今回フェルナンデス社製のサスティナーキット増設取り付けのご依頼を頂戴いたしました。
入庫時の状態はフェンダーノイズレスピックアップのテレPUセット+ストラト用センターPU3シングル搭載、22フレット、6連ブリッジで、ストラトみたいにいろんな音楽に対応出来る様にアップデートされた実践的な仕様のモデルとなっています。
今回はこの楽器にザックリ言うと、トレモロユニットとサスティナーを搭載するという作業を行いますが、最終着地イメージは、現在市販中のフェンダー社製Miyaviモデルテレキャスターになります。
以前よりYOUTUBE等で拝見しているギタリストさんだったのですが、今回の作業を担当させて頂く際に、再度動画をいくつか拝見致しましたが、まあ物凄いテクニカルなギタリストさんですね。久しぶり現れたギターヒーローである事を強く認識しました。
その結果、個人的にファンになりました。今回はその根幹に触れる様な作業でしたので気合が入ります。
個人的にこれ自体は非常によくできているピックアップだと思っていますが、今回のフェルナンデス社製のサスティナーキットとはどうしても組み合わせ的にリアピックアップのパワーが足りないことが予見されます。
そんなことも含めて今回はセイモアダンカン社製のlittle59TELEのリア版に交換する事となりました。
セイモアダンカン社製テレキャスタータイプのリプレイスメントピックアップとしては定番仕様ですね。そして直流抵抗が17kΩ近い為、非常にパワフルなピックアップとなります。
併せてセンターピックアップは同じくセイモアダンカン社製のvintage for stratというものでした。
個人的には、このピックアップは大好きで、私が個人所有しているストラトキャスターのピックアップの一部はこのpピックアップを使用しています。パワフル且つ、ミットレンジの食いつき感と、巻弦に対するバイト感(噛みつき感)がとても優秀なピックアップかと思います。
ただ昔から思っていることですが、この手のリプレイスメントPUに関して、付属されている高さ調整用のパーツがいまだにゴムスリーブである事が微妙な気持ちとなります。共振を起こす可能性が否定できない事や組み立て効率などはゴムスリーブのほうがいいのかもしれませんが、経年変化で飴のように固まってしまっているものも見受けられますので、うーんどうにもなあ、、という気持ちになってしまうものです。
これは余談ですが、このバネもピックアップマウントビスも非磁性体の方が良いんじゃないかと思っているんですが(それが何故かはまたいつか機会があればご説明します)ピックアップ付属のビス類は殆どが磁性体のものですね。
また今回ブリッジも、最新のテレキャスターブリッジでMAVERICK SUPER VEEトレモロシステムというものを組み込みます。
(トレモロの画像挿入)
そして今回、最も重要なデバイスであるフェルナンデス社製サスティナーキットFSK-401を搭載します。
最近、フェルナンデス社製のギターの流通量が少なかったり、このキット単体も結構入手ルートが限られている、というか、フェル社の公式サイトぐらいしか入手の方法が無い様です。
これは余談ですが、現在新型コロナの関係や、国際物流上の海上コンテナ不足等により、電子部品の流通が安定しない状況ですし、今後もこのキット単体の入手は難しくなるのかもしれませんね。
さて、作業的には、構造変更などを伴い、楽器の種類を根底から変更させるような作業が必要となります。
そうなると、最初のプランニング、その段取りが非常に重要になります。
今回の作業要件としては以下の通り
- テレキャスターブリッジからトレモロ仕様のブリッジに変更
- フェルナンデス社製サスティナーを搭載
- バッテリーボックスの搭載
- すべてのピックアップを交換
- 電装コントロールの交換
- 最終調整
箇条書きにしても結構なボリュームな作業になります。
幸いにして今回は上記のサスティナーキット単体及び使用する部品を全て、お客様に御支給戴きました。
その為、部品の到着待ちなどでフィッティングが止まるなどという事はありませんでした。
まずトレモロ増設を行うという事は、まずその加工が可能なのかどうかを各部採寸を行いながら作業のスケジュールを立てる必要があります。
これの位置や、加工可否、セッティングの可否が決まらないと、2番へ作業を進めることができませんので、慎重に製図やフィッティングなどを何度も何度も行い、最適な位置、取付方法の模索を行います。
MAVERICK SUPER VEEトレモロシステムのセットには寸法図が付属しておりますので、その通りにインストールすればいいのですが、実機との整合性を取りながら、慎重にセッティングを詰めていきます。
実際には何度も部品をあてがっては採寸等のフィッティングを行い、楽器として無理が無い様に、尚且つ作業上危険がない方法を模索していきます。
図面上指定された数値を基にすると元の楽器と整合性が取れるのかどうか、その検証には時間をかけ最も気を遣う所です。
そして、木工用トリマーのジグを作成し、木工を始めます。
当方は小規模工房なので、大型機械などを入れる場所がありません。出来得る限りスペースをやり繰りして木部加工を進めます。
画像上はすでにサスティナー回路を収める部分の座繰りも済んでいます。
合わせて、フェルナンデス社製オリジナルバッテリーボックスの座繰りも行ってあります。
この後、キャビティーには導電性塗料を散布し、ノイズ対策を行います。
フェルナンデス社製サスティナー搭載作業を行います。
ブリッジの取り付けが終了、楽器として成立する事を確認した後、いよいよサスティナーの取付のための準備に入ります。
実際miyaviモデルを画像で確認していると、なぜこの部分がこうなっているのか?等を想定を含め、実機にフィッティングを行いながら、作業を進めていきます。
実際、今回はmitavi氏モデルのお手本がある為、それを踏襲しながら、なぜご本人さんがこの様にしているか、それをイメージしながら滅茶苦茶アナログ的なフィッティング作業を行っていきます。画像だけ見るとアホか?と思うほどアナログです(笑)
フェルナンデス社製サスティナーキットは基板をスイッチで固定する方式の為、この子定位置を間違うとリカバリー出来ない程の事態を招いてしましますので、慎重に(と言ってもいつもですが)作業を進めます。
ここでピックガードに対してサスティナー基板の取付穴を決めており、実際はボディーの座繰りよりも先にこちらを決めていて、それを基に上記のボディーに対する座繰り位置を決めています。
又余談と言いますか、大前提になりますが、フェルナンデス社製サスティナーはアクティブ駆動となっているため、パッシブでは一切音が出ません。
又、上記でご紹介した通り、ピックアップはすべて交換し、フロントPU部分にはサスティナードライバーが搭載されます。
サスティナードライバーその物をシングルコイルとして使うとしたら、少しイメージが違う音色になってしまいますが、ハムバッカーとして使うならばこういう音のPUあるよねー的な音色がするのも事実です。単に盲目的にこのドライバーの音が悪いという風にDISる気にはあまり元々私にはありません。
サスティナーキットの詳細は以下の通り
インストールマニュアルなんかもダウンロード可能です。
とまあこんな感じに仮組を行い、サスティナーの動作及び効きを確認しながら進めます。
サスティナーキットにはもともとサスティンボリュームがついているのですが、それは半固定抵抗で置き換え、ヴォリュームフルの状態でコントロールキャビティーに内蔵します。
合わせて、パッシブ部分の電装系は今回そう交換する事になりました。この辺りは一般的なCTS社製ポットとオレンジドロップ、スムーステーパーボリュームキットを実装します。
実際サスティナーキット以外の部分はパッシブ定数でコントロールを構成する事が出来ますので、これらの作業自体は何ら難しい事ではありません。
最終調整に関しては、プレーヤーさんの好みにもよりますが、基本的にはサスティナーを安定して駆動させることを中心に考えます。とはいえ、この回路の性格を把握しておかないとどうにもなりませんので、フェルナンデス社様のサスティナーキットのhpからインストールマニュアルをダウンロードして確認しながら、細かく進めていきます。
参考にするのは上記リンクでした。まあ物凄いプレイですね。
今回のセッティングは結構近い所まで攻められたのではと思います。
そして、最後の最後まで気を抜くことなく、組み上げていきます。
そうして漸く下記の状態で完成になりました。
とまあこんな感じで作業完了です。トレモロキャビティーは木部むき出しのままではあまり良いとは言えませんので簡易的に下地から部分塗装を行っております。
こんな感じで作業終了です。
作業的中、ほぼ楽器を半分作ってるようなイメージでした。色々考えながら作業を行っておりましたが、所謂シグネイチャーモデルがなぜこのようになるのか、こうなっている理由、等を深く考える機会を頂きました事を御礼申し上げます。
この度はご依頼ありがとうございました。
サスティナーチューンUPに関して、ご要望等ある方は下のメールからご連絡の程、お願い申し上げます。
(但し本記事を参考に作業なさった場合のトラブル等は当方では負いかねますのでご留意くださいますようお願い致します。)
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IRP PRODUCTS.NET 技術担当:新谷まさき
(通関士資格保有/物流コンサルタント兼任)
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