年明けから既にいくつかの作業依頼を受けておりまして、その中でもこれはちょっと面白かったと言う物をご紹介したいと思います。修理品目としてはエフェクターになるのですが、機能等を勘案するとrecスタジオにある様なラックマウントプリアンプみたいな転がしのエフェクターの不具合について修理します。
確かこのシリーズの原型になるプリアンプは90年代の終わりか00年代の初めに似は既に有った様な気がするのですが、最初は歪系エフェクターだったでしょうか。その後、このケースを流用した多品種展開になって、バッファだとかアコースティックギター用プリアンプだとか、そう言う展開をしていたように思います。今も後継機種っぽい物はある様ですが、http://www.crewsguitars.co.jp/cmx-3/今回修理する様なプリアンプに関しては、生産終了っぽいですね。部品が生産中になった為とか何とか。
さて今回はどんな不良かと言いますと、電源が入らないとの事。事前にヒアリングしていると、一瞬電源が入ったり切れたりするとかって話だったので、「んーたぶん、電源のicかその周りのコンデンサ、配線がちぎれかけてるとか」そんなところだろうと読んで、今回の修理をお受けする事にしました。
作業場に到着してから、まずは状況確認を行います。確かに電源は入らないし、微かに電子部品が焦げる匂いがするなど、本当に良く有る電源トラブルと言った所。
修理に着手するより前に原因を探っていきます。この手の修理は、修理個所不明の場合結構深い所まで分解しかしまわないと見積もりが決定できないという難しい所もある為、出来るだけ事前に破損している場所の想定と破損個所の特定が肝要になってきます。
そんな訳でざっくり分解し、どこが電源回路一式なのか、そこだけの分解が可能なのか、そして本当にそこが原因なのかを見極めます。
今回の回路は良く出来ていて、電源部分に限らず、ある程度回路がブロック化の上、分解しやすい様にはなっていました。逆に言うと組み立て(生産しやすい)やすいと言う事も言えますから、凄く設計としてまともです。ただし、分解はコツが必要で、文字で書くほどには簡単では有りません。
破損個所の検査の結果は、やっぱり電源(三端子レギュレーター)の半田クラックでした。これは電気製品には意外に良く有る破損です。
また破断は、電源部分に限らず、電気回路は(当たり前ですが)どこか一か所でもこう言う破断が起きれば不調にを起こします。音が出無くなるならまだ壊れたと判断が付きますが、その他の判断が付き難い部分で起きると、「なんか調子悪い/音が変わった様な気がする」と言った変調だけが感覚として残ると言ったケースも多く有るのではないかと思います。
半田クラックなんかは、正直半田付けのやり直しを行えば治ってしまうので特段書く事はなありませんし、事実この機械は破損部分を半田付けし直しただけで治ってしまいました。これだけでは全く面白くない事と、今後その半田クラックが起きにくくする為にはどうしたら良いのかと言う事を考えるのが、我々の様な立場の人間の仕事かなと思います。
そも、楽器用機材は持ち運ばれる事が前提の基本製品特性として成り立っており、一般的なオーディオ用途機材や精密用途機材と違っています。という事は、基板回路やその他の構成要素に置いては対振動性に強い構造をしていなければならない訳です。然しながら、今回の電源icは放熱板取付用の穴があいていて、その穴は利用されていませんでした。
この電源icは部品サイズとしてかさが大きい割に、どこにも固定されていなかった為、移動当の振動に対して、半田の締結力程度ではic自体の自重を支えられなかった物と思われます。これが今回の破損の原因です。
だったらこの穴を使って、基板にicをビス止めしてしまえと言う事で、、
こんな風に仕上げてみました。たまたま、運よく基板の背面(ビス取付面)が、ベタアース部分だったので、単純にビス止めが出来たという話。温度計で測ってみましたが、電源icの割に、発熱もほとんどしない為、こう言う解決法を取ってみました。
後は元の通り組んで作業終了。終わってしまえば、なんて事無い修理なのですが、やってる最中は、楽しくて写真を撮り忘れます。
依頼主でプロギタリストのY氏曰く、この機材を指して、無茶苦茶「音」が良く、スタジオ機材みたいだと絶賛しておられました。そんな訳で、そのうちどこかのメディアから今回修理した機材の音が聞こえてくるかもしれませんね。
それでは本日はここまで。