ご依頼主は私の古い友人でもあり、富山の管楽器工房を経営する高木君からのご依頼でした。
小ぶりなプレシジョンタイプのボディーにレースセンサーPU/アクティブサーキット、そしてフェンダー刻印入りのブリッジにファインチューナーが付いていたりして、専用設計を思わせますし、中々面白い楽器かと。
特にブリッジは何やらシャーラー製っぽい作りになっているのですが、これが中々良い重量と構造をしています。私このブリッジ、結構好きです。
ただ、このベース、色々調べましたが中々製品詳細が判りません。
Guns N' Rosesのダフがこんな色のベース使ってたなーと言う感じでしょうか。
ボディースタイルはプレシジョンベースですが、リアにジャズべPUが付いていて、ピックガードレスなのも特徴ですね。90年代初頭はこう言うPJスタイルの物がかなり流行っていた様で、各社このPUレイアウトの楽器を発売していました。
私はこのレイアウトに関してはどうしてもPUの位置の問題で、構造的に無理が有ると考えています。
理由の一つがプレシジョン用PUは1/2弦と3/4弦の弦振動をピックアップする位置が違うハムバッキングなのですが、これを通常のジャズべ用PUと組み合わせてハーフトーンを出した際、必ず1/2弦又は3/4弦の弦振動をピックアップする位置が違う為、少し特殊はハーフトーンになります。いわゆるジャズベースのハーフトーンとは違うイメージの音色になってしまいますね。
求めるものが違うと言ってしまえばそこまでですが。
但し、これにはこれにしか出せない音色が有るのも事実で、潜在的なユーザーの方は多いんじゃないかと思っています。
まあそんな感じですかね。
後このベースは、亡くなった私の師匠筋に当たる方が一度メンテナンスを担当したのですが、それから10年近く経ち、随分各部の調整が緩くなっていました。
作業内容は以下の通り
@バッテリーボックスの増設
Aトータルのメンテナンス
B配線の引き直し
取り敢えずコントロールキャビティーを開けてみました。
量産品だし、こんな物と言えばこんな物。駄目と言えば駄目。と言った感じですね。
このプリアンプは2バンドEQでPUバランサー及びマスターボリュームまで一枚の回路基板で構成されていて、尚且つコントロールポットをボディーに取り付ければ自動的に回路基板が固定されると言う、非常に生産工数的にも優れた仕組みになっています。さすがアンプも作っているフェンダーの開発力と言ったところでしょうか。また結構良いポイントを押さえたEQカーブをしています。
いつも通りゴトー製バッテリーボックスを追加工して増設。
次はコントロールキャビティーのシールディング加工を追加
元々塗られていた導電性塗料は非常に薄く、又塗り斑がひどかった為に重ね塗りを行いました。
各部の導通をテスターで確認してから、、、
回路を再組み込みしました。
再組み込みの際、基板から出ている配線等も処理し直し、各ポットやキャビティーとも配線できちんとアースに落として有ります。これでノイズ対策はバッチリ。
こんなノブですら専用設計ですから、やっぱりフェンダーの開発力は凄い。しかも実に使いやすいのです。
無茶苦茶因みな話ですが、これスタックノブ/2軸2連ポットでして、古いジャズベースなんかに有りましたが、これは下段がEQで上段がVOになってます。
普通に考えたら下段だけセンタークリック付きの2軸2連ポットで、更に抵抗体の定数が上下で別って相当レアですし、これぞ専用設計!って感じです。
何となくですが、ジョン・サー氏が開発したんじゃないかなーとか想像してしまいますね。
因みにエリッククラプトンのミッドブースターはジョン・サー氏が設計したものだった筈。それより前のエリートストラト系のプリアンプは現在BBE社で取締役のポール・ギャゴン氏がフェンダー在籍時代に開発したと何かの資料で読んだ事が有ります。
と言った様な所で各部振動系統をメンテナンス/調整して終了です。
音を出してみて思ったのがやっぱりレースセンサーはベース用でもレースセンサーだなーと思った次第。
後は、各部調整中、色んな点で亡くなった師匠筋の方が調整の際に触った痕跡を見つけ、ちょっと色んな事を思い出したりしました。
高木君、ご依頼ありがとうございました。
彼は冒頭にも有りましたが、管楽器のリペア工房をやってます。
リペアスタジオ高木
もし管楽器の事でお困りの方がいらっしゃれば是非覗いてみて下さい。