で、その依頼内容は
何処までもサイケデリックで、踏んだら「ピー ピャー ガー」と言う音がする物
と言うまことにアレな内容
とは言え、先ずはピーとかガーとか言わす前にベースになるファズの音を作らなきゃなりません。
その為の、資料音源がコレ。
今の基準のファズの感覚から行くと、国産サイケの王道みたいな音。
60〜70年代辺りの日本のスタジオレコーディングシーンについての歴史に関する文献や資料を紐解いていくと、どうもこれらのファズに関しては国産ファズの名器「ハニーファズ」や「シンエイファズ」辺りの物が沢山の音源で使われていたとされています。
またスタジオミュージシャンと言う言葉も未だ無く、奏者の数もそれほどいなかった時代、ファズと言う商品もこの2機種ぐらいしかなく、機材がみんな被ってしまった為、似たような音色の音源が多数存在する結果となったようです。今ではそれが一つのGSサウンドとして連想される音色に定着しているのですから、まあ時代を象徴する音であったのは間違いありません。
コレなんかも良く似た音がしてますね。
当時は海外製品のエフェクターはあまりに高価な為、手に入れられた人も限られていたようですね。日本で一番最初にファズボックスを使ったのはかまやつひろし氏だったと言われてますが、当時香港にそういった欧米の楽器や機材などが貿易途上で通過するルートが有り、自分たちで買付けに行っていたんだそうです。
又これは別の話では有るのですが、日本製のファズやエフェクターはOEMブランドとして沢山輸出されていたそうで、その中の一つ、ジミヘンドリックスが使った「ユニヴァイブ」、これがシンエイ製で現在コルグの監査役で有る三枝文夫氏が設計開発した物であった事は今でこそ有名な話ですが、情報の乏しい時代、それはそれはミステリーに包まれた伝説的なエフェクトでした。
69年ウッドストックの伝説的な名演の陰で、日本人技術者が作った音が使われていると言うのは、大変な尊敬の念と共に、日本人技術者としては誇らしい気持ちになる話ですね。
とまあ今度は自分が作る物に話を戻します。
ファズがピーだとかピャーって言う時は大体回路が発振(わかりやすく言うとハウリング)してる訳ですが、今回ファズ部分にネガティブフィードバック回路を組み込めばいいだろうと思い立ち、色々トランジスタをこねくり回して設計していたのですが、

試作していた時から、「今回これ結構良い音するわー」と思った関係上、多少の量産が出来る様に版下を起こし、プリント基板で製作する事にしました。

で、出来あがった基板にこんな感じでザクっと基板に部品を載せました。全部手作業と言う効率の悪さ。
そんなこんな試作を繰り返している頃に、どうも東芝のトランジスタで2SC1815がとうとうディスコンになるとの情報が。。。

もう何年も前から新規設計非推奨銘柄に入っていたの知ってましたが、とうとうこんな時代が来るとは。。多くの人がそうであるように、私もこれでトランジスタのイロハを学んだので、寂しさと共に2SC1815のお墓を作って弔ってあげても良いかな?位の気持ちになった程です。よく焼き殺しましたしね。。
フェアチャイルド辺りが代換え品種を作っているので機能的には困らないのかもしれませんが、、、
ってな余談は置いておいて、今度は出来あがった回路を入れる箱のデザインを。

ファズの癖につまみやコントロールが多くて、なんかロックじゃない感じがしてしまっているのですが。。
まあこれもコントロールを色々できる様にという話。本当はシンプルな方が良いんですけどね。

ガツンとケース加工!何となく完成が見えてきた。

後は定型通り組み込んで。。


完成!

ラベルだとか何だとかは全部フリーデザインでやらせて頂きました。
エフェクターにQRコードを埋め込んでるんですが、これは初の試みでして、例えばライブ現場でマニュアルが必要になればスマホでポンと読み込んで、マニュアルが読める様にするとか、まあいろんな発展性が有るので、今回実験的にデザインに組み込んでみました。まあまだそこまでのサービスの組込は出来てないんですけどね。
と言った様な所でファズ製作終了
で、出来あがった後の音が無い!
残念。
その後、
こう言う方たちです。
試奏動画が届きました!
単体で聞くと冒頭のサイケ+発振物なんですが、彼らの機材に入ると、どうもエクストリームな感じの音で演ってるようですね。
未だ基板が2セットほど残っておりますので気になった方はぜひご連絡下さい。
O様
ご用命有難うございました。