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2009年08月19日

フェルナンデスのブリッジスタッド浮き修理&etc

ここの所、地震や台風などの天災が多く続いておりますが、如何お過ごしでしょうか。

それ以外にも芸能ネタや選挙ネタなど、世間を騒がす要因がたくさんありますが(私はテレビを全く見ないのでアレですが)、何にせよ平穏な生活が営めると言う事が如何に有り難い事かと、日々実感している次第です。

今回は久し振りに修理の記事を書いてみようかと思います。F氏やM氏にも記事書かないの?と突っ込まれているので・・・

8月某日、某音楽ユニットのS氏より修理依頼がありまして、その内容が以下の通りの内容でした。

s_fer1.JPG
(サムネイルをクリックして下さい。画像が拡大します)

フェルナンデス社製のソロイスト系サスティナー搭載ギターなんですが。
これ、ぱっと見は結構良く出来てます。が・・・

s_fer2.jpg
スタッドアンカーが手でも抜ける位に緩々です。
この手のトラブルって実はよく有りがちですが・・これではアームアップした場合、即座にスタッドが抜けてきます。
もう一つ言わせて頂くと、スタッド自体の精度も余り宜しくありません。

また穴その物も随分と深い様ですので、それも埋め戻し、適切な穴の深さに直します。

しかし最近では珍しいですね。トレモロキャビティー無しのフロイド搭載ギターは。
この手の構造を持つギターの場合、ボディートップと弦がかなり離れた所に位置しますので、慣れない人は弾きにくいかもしれません。(ピックが深く入り込んでしまう為慣れないと1〜2弦を切りやすい)その代わりこの構造を持つギターはブライト且つ、中域の張り出しが結構強いので好きな人は割と多いのではないかと思います。

実作業は特殊とは言えない迄も独自の技術を使っておりますので、どうやっているかは秘密です。画像も撮り忘れてますが。

とまあちゃちゃっと、この辺りは修理完了です。

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問題はその次に有りました。

フロイドローズを調整しようと思ってネックを外すと・・・・
s_fer3.jpg
なんじゃこりゃ。
(一応書いておきますが、ネック外した直後の画像ですよ)

ラワン材?でビス穴を埋めてありました。ネック側だけ埋めるならまだしも、ボディー側から丸棒を刺してその上からネジを入れたような状態になってました。。。これは前オーナーの仕業なのかな?メーカーでやったとも考えられるし・・・どっちにせよコレは酷い。

なんとも言えませんが、とにかく修理修理。


方法としてはボール盤で元のビス穴や傷んだ部分を全部カバーできる程度に大きめの穴を開け、そこに適切な処理を行ったダボ材を埋め戻して行きます。
s_fer4.jpg
作業後はこんな感じですかね。

この時に使うダボ材はメイプルを使う場合も有りますし、その時々に応じて適切な堅木を使います。但し今回の材料は秘密。メイプルでは有りません。

s_fer5.jpg
もともとのネック材の毟れ等も修理しつつ、適切に埋め戻したらボール盤でジョイントホールを開け直し、ネックの反りを調整してから再組み込みです。

s_fer6.jpg
で、組み直してフロイドローズの調整も済ませた後の写真ですが、入庫時との違いが判りません。まあそんなもんでしょう。見えない所の修理ですから。

本音を言うと、ネックポケットの擦り合わせ+角度付けなんかもやってしまうと良いのですが、今後フロイドキャビティーを追加工する可能性を鑑みた事や諸般の事情の兼ね合いも有り、また追々要望が出た時に対応しましょう。

と言った様な所で本日はここまで。

S氏へ、なんか有ったらまたリアクション下さい。対応します。

因みに当BLOGでは過去にフロイドキャビティー追加工も記事にした事が有ります。
フロイドローズ用アップリセスの追加工
M様フロイドザグリ完成

その他フロイド絡みではカスタムイナーシャブロック作成等も過去に手掛けております。
ジャクソンソロイストの改修
i_jac_s10.jpg

興味の有る方は是非アクセスを御願い致します。


posted by IRP Products at 22:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 楽器リペア関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月02日

千年の夏

現在私の実家は奈良の片田舎に位置しておりまして、実家を出た今となっても、ふと思い出す悠久の風景と言うのが有ります。

子供の頃、あれほど終わって欲しくないと願った夏休みの原風景となんら今だ変化しない片田舎な訳ですが。

で、奈良が実家と言う事は、そこいら中に有る寺社仏閣・古墳など悠久の原風景が私の記憶の下地になっております。

山の谷間に沈んでいく太陽、妬けるあぜ道と田園風景と寺社仏閣、千年変わらない祭囃子、そして風の音・・・

子供の頃の友人で、1000年間血筋の続く(と言われるが当家の人も良く判らないらしい)神社の家に生まれた兄弟が居りました。その友人と偶然再会してから、とある雅楽の楽器〜修理製作家をご紹介頂き、色んな話をさせて頂くのですが。。。

最近はブログに修理製作記事を殆ど載せなくなりましたが、その理由の一旦として、エレキ/アコースティックギターの精密なリペアや製作で煮詰めて爛熟させた楽器の音も良いですが、もっと素朴な楽器の音を心が欲している。。とそんな気になって来ているのです。
(昨今のあまりの忙しさで心に弾力性が無くなって来ている所為かも知れません・・)

雅楽や、そこに至るアジアから渡来してきた音楽、私の原風景を連想させる楽器の研究へ一歩踏み出したい・そしてそれを自分の技術にフィードバックさせたいという想いがどんどん膨らんで来ています。

それらはきっとこのBLOGで紹介する事は有りませんが・・・確かな物を持ち帰ろうと思っております。

私に残された技術者としての時間はかなり多く見積もってあと30年。
1000年以上の歴史を持つ音色の秘密に迫るにはあまりに短いと言わざるを得ません。

それが具体化するまで取り合えず生暖かく見守っていてください。

こう言う事を書くとIRPを辞めてしまうのか?と言う質問が出てしまうかも知れませんが、それは有り得ません。コレは私の一生の仕事です。

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又ちょっと別の話ですが、私のライフワークである寺社仏閣巡り法隆寺編の写真を一部ご紹介。

法隆寺.jpg

法隆寺2.jpg

法隆寺3.jpg

法隆寺4.jpg

因みに法隆寺の柱の下は石盤の基礎に対して材木の根太を敷く工法が取られているのですが、
宮大工の仕事.jpg
石の表面の凹凸に合わせて根太が削られてジャストフィットしています。。。。

恐るべき宮大工の仕事。。。
posted by IRP Products at 13:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする