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2008年05月24日

LPスタジオの修理調整

埼玉県在住のH様より、LPスタジオの修理調整の作業をご依頼頂きました。

H様がしばらく友人に貸していたそうで、戻ってきた時にはとてもじゃないが弾けないし、なぜかどう調整しても3〜4弦のビビリが取れない状況になっているので何とかならないか?とのご相談でした。

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(サムネイルをクリックしてください。画像が拡大します)
到着時の写真を見るだけでは大してトラブルを抱えているようには思えないのですが、弾きながら各部を観察していると、ネックが逆反り・ナットの弦溝の底が割れていると言う症状で、ブリッジでの弦高調整ではローフレットの弦高までは上げられない状態でした。

雑然と管理された楽器では良くある症状ですね。

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今回ブリッジで起きていた症状で、写真で見ただけでは判らないのですが、

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ブリッジが(長年の)弦の圧力によって真ん中辺りが湾曲してしまっております(この写真で見るより実物はもっと曲がってます)。この状態では、1弦6弦と3〜4弦の弦高バランスが悪くなって指板Rと合わなくなってしまうんですね。

この症状の為、指板Rとブリッジ弦高バランスの崩れが相まって3〜4弦の弦高が異様に下がってしまっていまして、これが今回のビリ付き症状の大きな原因でした。

この辺りオーナー様と話し合いを持った結果、ブリッジはゴトー製の新品に交換してしまう事にしました。(曲がってしまったブリッジも逆にまげて治せない訳じゃないんですが、オーナー様の気持ち的な所が大きいですね)

因みに、こんな事本当に起こるの?なんて不思議にお思いの方もいらっしゃるかと思いますが・・・・古いギブソン系の楽器は、かなりの割合でこの症状が起きてます。古いLPなどをお持ちの方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

次はネック周りですね。
懸案のネックの逆ゾリですが、トラスロッドが効かない程逆ゾリしている場合、否応無しで指板修正の為にフレット打ち変えになってしまうのですが、このネックはトラスロッドを緩めるとばっちり真っ直ぐに戻せましたのでこの部分は一安心です。

因みに逆ゾリでロッドが効かないネックを治す場合、指板を削ってネックを仮想的に真っ直ぐにする訳ですが、そうするとポジションマークやインレイが擦り切れてしまう事が多いので、インレイの入れ直し費用が掛かってしまう事があります。指板も部分的に薄くなるので、ネックの厚みが部分的に変わり、グリップ感やフィーリングも変わってきます(この辺り、気になる方と気にならない方と極端に別れますが)

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フレット周りを観察すると、全体的にはあまり弾かれていない形跡で特定の部分のみが減っている状態でした。最初はフレット打ち変えをご希望だったんですが、フレットは擦り合わせで十分対応出来ると判断しました。

その辺りオーナー様に報告しました所、「じゃあ擦り合わせで御願いします!費用的にも助かりました!」的な話で喜んで頂けました。

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次は、ひびが入ったりしていたナットをさくっと交換ですね。(この辺りもう何度も記事にしてきていますので、思い切って割愛させて頂きます)

因みに、このナット溝の一部、穴が開いているのが判りますでしょうか?
これ、ギブソン社の工場でネックグリップなどを加工する際、機械に固定するジグ用の取り付け穴だったりします。ここは空いたままになっているのも気持ち悪いのでマホガニー材で埋めてしまいます。

その後、新しいナットを取り付けて外形を削り出したら・・・・
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完成です。この後、調整の最終段階でナット溝の切り込み深さをばっちり決めて、ローフレットでの弦高を決定します。ここはピッチ(音程)も重要に関りあう部分ですので慎重に作業します。

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今回ブリッジを交換して綺麗に弦溝を掘って整え、音の立ち上がり(基音)もしっかり出せるように各部精密に調整して完成!

ちゃんとギターとしての機能を全て回復させました。
音はというと、LPスタジオは結構特殊な(セミホロー状のマホガニーバック材に「入れ子構造」で別の柔らかい材が組み込まれています)ボディー構造をしているので、独特な。。他に無い音のLPですね。

オーナー様より、「ちゃんと弾ける様になって戻ってきてとても嬉しいです」と言うような喜びの声を頂けました。

と言った様な所で本日はここまで!

関連記事
「ナット交換関連記事集」


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2008年05月23日

ジャクソンソロイストの改修

先日のシャーベル繋がりで、今回はジャクソンソロイストの改修作業のご依頼を埼玉県在住HN:じょん様より頂きましたので、今回はそれらの記事になります。

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到着した日、滅茶苦茶曇ってたんですよね。。画像が滅茶苦茶暗いんですが、綺麗な無垢のフレイムメイプル2Pボディーでボルトオンネックのジャクソンです。ネックはジャクソンの得意のオイルフィニッシュ(的な)仕上げとなってます。

先日のシャーベルMODEL6はスルーネックでしたが、こちらのジャクソンブランドの物がボルトオン・・・・

ジャクソン社の当初は、シャーベルブランドがボルトオンネックで、ジャクソンブランドがスルーネックと言う作り分けが主流だったと記憶していますが、いつの頃からかブランドや仕様が入り乱れてしまっていたようですね。(前回のシャーベルに関しては日本国内で生産された物だったからかもしれませんが)

今回ご用命頂きました作業内容は、
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前回にも少し触れました様に、ケーラータイプのナットからフロイドタイプのナットへ換装作業とPU交換、そしてフロイドローズ用イナーシャブロックのワンオフ製作と言うご要望を頂きました。

この写真をご覧頂くと判ります様に、ケーラータイプのロックナット?機構は、所謂普通のギターのナットを交換せずに追加工で取り付ける事が可能。。と言う物なのです。

つまり、通常のナットとロック機構を同居させている訳ですね。
この構造の利点は開放弦の音色は通常のギターと変わらないまま、弦をロックしてチューニングの安定を図る事が出来るという訳です。(プロギタリスト鈴木茂氏のギブソン335にも取り付けられてますが、アレはこういう効果を狙っての事でしょう)

所が今回の楽器の様に、フロイドローズ搭載でダイナミックにアーミングした場合、ナット部分で弦の稼動摩擦が大きくなり、プレイに集中出来ない程ピッチが狂う事もあります。(と言っても一応はヘッド側でロックしているのでシンクロナイズドトレモロ程ピッチはズレ無いんですが)

そんなピッチの狂いが気になって仕方が無いとオーナ様がお悩みでしたので、今回フロイドローズ用のナットへ交換する事になりました。

上記の話の裏返しになりますが、フロイドローズ用のナットの場合、0フレットで弦をロックしてしまう為、弦の稼動摩擦部分が限りなく0になり、チューニングが安定すると言う訳ですね。但し開放弦の音は金属的になりますよ。と言った所ですか。

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早速通常のナットとケーラーナットを外してみました。
このナットを外した周辺部を切削加工してから、メイプル材で下駄を履かせて底上げし、フロイドローズのナットを取り付けられる様にする訳ですね。

文章で書くと2行ですが、この加工結構大変でした。。。。

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この位の大きさのメイプル材をナット部分に埋め込む訳ですね。これはまだ仮なので木取りの方向は違います。

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これがその大変だった加工中の写真です。
画像の左側、ネックの角度と元のナット溝の深さに合わせて溝を一段削り込んであります。
最初は元のナット溝を埋め木してから、角度を削り出して下駄を履かせようと思ったんですが、そうすると、埋め木が二枚になって強度や見た目が悪いなーと言う判断から、今回はこう言う方法を取る事にしました。

右の画像は、削り込んだ溝にぴったり収まるようメイプル材を削り出して接着している写真ですね。途中の工程の写真は全く残ってませんでした。因みにクランプを掛ける際、工具でネック裏に傷を付けない様に当て木とノンスリップシートを挟んであります。

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この下駄を作るにあたって、ロッドナットに工具が入るようにパイプレンチのサイズ分だけ「工具の逃げ」をあらかじめ掘り込んで有ります。

そしてなぜ、下駄程度にこんな厚いメイプルを貼ってるかと言いますと・・・・規定値近くの薄さで作って貼ろうとして、仮にクランプを掛けたら苦労して整形したメイプル材が割れてやり直しました。。泣きました。(意味わかります?)

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そして、その後、メイプルブロックを規定の高さ・形状にまで削り出して、概ねこの辺の木部加工は終了ですね。

ヘッドトップから連続していく下駄の側面に関して、オーナー様は無垢のままでも良いと仰ってたんですが、どうせなら。。と、こちらの判断で部分塗装させて頂きました。

グリップ側面はこの後、オイルフィニッシュの後、ウェザリング(汚し)を行ったのですが、その写真もどこかへ行ってしまいました。。。

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そして、やっとこさ、フロイドローズ用のナットの取り付けですね。今回は上締めタイプなので取り付けはさほど苦労しません。
本当はもっとこの辺、接地面積における音色・・・等々を突き詰めて研究したいと思って自分の楽器ではあれこれやっているのですが、まだまだお客様の楽器でやる訳には行きませんので、ここは素直に取り付けます。

この時点でフレットの擦り合せも行ってあります。

ネック周りはこの辺で一旦終了

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そして今回頂いた依頼の中で一番体力的に大変だったのは、フロイドローズ用のブラスブロックをワンオフで作った事でしょうか。

と言うのも、このオーナー様と前に何かの機会にお話していた時に、私が「シンクロのイナーシャブロックを自分で作った事有りますよ」と言っていた事を覚えていらっしゃった様で、「それならフロイド用のも作れませんか?折角だから試してみたいんです。」と、とても有り難いお話を頂きましたので、製作させて頂きました。

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色んな話し合いの末、数ある材料の中から今回はブラス材(真鍮)を選んだ訳ですが、切削性が良いブラスと言えど金属です。
そして私はフライス盤など所有しておりません。と言う事で自分用に作った時と同様、手で削り出しました。。。。

ネット上の金属密度の資料からブラスの質量を調べておいて、ブロックの体積に当て嵌めてみる。。。なんて作業を経て、ある特定の重さになる様に設計して削り出しました。

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ボール盤で正確な取り付け穴を開け、タップでネジを切っていきます。。。

この時点で予測重量にほぼ近い結果が得られたので、個人的には中々良い経験になりました。(高精度の秤が欲しい。。)

そして致命的なブロック単体での写真の撮り忘れ(笑)泣けますわ・・・

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でもまあ組み立て前の写真が残っていたので良しとしましょうか。

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フロイドを組み立てて、スプリングを掛けるとこんな感じですね。
弾いた感じアーミングが少し重くなりましたが、ピッキング時のアタック感とサスティンは物凄く延びました。フロイドの場合、ちょっとでもアームダウンをするとガクンと音量が下がってしまいますが、このブロックですと、その辺り少し改善されます。後の使い方はプレーヤーさん次第!ピッキングニュアンス等々の使い心地に関しては、使い込んで頂いてレビューをお待ちします。

しかしまあ、いつもながらにあまり写真が残っていないのでかなり伝わりにくい話ばっかりになってしまってますが。。。。

次はPU交換に行きましょう。
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ジャクソンオリジナルのPUキャビティーで特徴的な所は、まるで他のPU搭載を拒むかの様に、ジャクソンオリジナルPUの形状に合わせて作られてます。この形状のキャビティーですとリプレイス出来るPUは限られてきます。(EMG、ダンカンのJBjrなどの一部のモデル、シェクター系などの配線取り付け用の耳が無いモデルに限られる)

今回はフロントPUにディマジオ社製「Pro Track」と言うPUを搭載する事になったのですが、これはボディーを加工しないと取り付けられないんですね。PUの耳と言いますか、配線が出る部分の逃げを作ってあげないといけません。

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と言う事で現物合わせでトリマー用ジグを作り、フロントPU部分ボディー加工を行いました。PUの耳の部分だけ拡張してあげた訳ですね。

これ文頭の方にも書きましたが、メイプルボディーで切削加工中物凄い甘い良い香りがしました(笑) 

その後はきっちりシールディング用導電性塗料を塗布して、アース線を配線します。

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配線は元々それほど雑に施工されては居ませんでしたが、国産のポット・レバースイッチが付いていたので、ここもオーナー様より交換指定がありました。この辺りはまあ難しくもなんとも無いですね。こちらのキャビティーにも導電性塗料を塗布してアースに接続します。

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そして色々ネックポケットの擦り合わせ等、細部に渡る調整を行ってから組み込んで完成!今回PU関係のパーツは全て白で纏める様にとのご希望で、PU等御支給を頂いておりました。

写真が暗いのが残念なんですが、非常に綺麗なフレイムメイプルにワインレッドのボディーなんですけどね。。これ。完成が夕方だったのが残念。

肝心の改造点、ロックナット部分も良好、フロイドブロックも(個人的に)物凄い良い結果を生んでます。交換したPU郡との相性もかなり良い様で、物凄いHR・HMギターになりました。

オーナー様からのレビューでも
「いやー物凄いですね。ここまで行くとは!」
と言う喜びの声を聞かせて頂きました。

ブロック削りは大変でしたが、このレビューを聞いてホッとしました。まだまだ勉強しなきゃ駄目な事は沢山ありますが、今回はひとまずここまで!

しかし写真って撮ったつもりでも全然撮ってないもんですね・・・

今回のお客様のHN:じょん様のHPはこちら
Jackson Factory
http://www7.plala.or.jp/charvel/

関連リンク
suhrのPU交換と電装系修正
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2008年05月22日

濃密な時間

ここの所、楽器関連の記事を沢山書いているおかげで、いろんな方からご連絡頂いておりまして、とても充実した時間を過ごさせて頂いております。皆様本当に有難う御座います。

さて、書くのをずっと忘れていたのですが、私のソウルメイトこと友人の藤本記子さんのCD
「LOVE SONG」が2008年4月17日に全国発売になりました。(一月遅れですいません。。。)

幻のデビューシングルから数年・・・・再度全国CDショップでノリちゃん達のCDが購入出来るようになったと言うのは、大きな一歩ですね!本当におめでとう御座います。

私も楽器の面で微力ながらにご協力させて頂いたり、その間に有った出来事などを振り返ってみても物凄い感慨深い物があります。

良い歌声・良い曲・良いプレイなどなど沢山詰まった物凄く良いアルバムなので、皆様お手に取って御一聴頂ければ幸いです。

プロローグ(LIVE) 【藤本記子】


NORICOM公式HP
http://www.bohbah.net/
http://www.myspace.com/1001575079
(あ、遅ればせながら、のりちゃんお誕生日おめでとう御座います!)

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そんなこんなで、そのノリちゃんの相方である福富君と話をしていた時に、上の動画でピアノを弾いている、いとを君の話になりました(この人のピアノがまた絶妙なんです)。
その話の中、前からいとを君がギターでやってるバンドが面白いと言うのを何度か聞いた事があったので軽く検索してみたら、YOUTUBEで動画が上がってました。

RICE 【rehagodenny'le】

すげえ!ライブ見てー!と心の底から思いました。
たまに邪悪な目をするいとを君がすばらしい(笑)ギターが凄いのも言うまでも無いですね。

曲の方も中毒性が高くて、ずっとヘヴィーローテーションになって気が付くと鼻歌歌ってます。

そんないとを君のBLOGはこちら 【親愛なる愚か者へ・・・】
http://blogs.dion.ne.jp/ito_hiromitsu_dearfool/

バンドのHPはこちら 【Rehagodenny'le】
http://www.manomana.com/music/rehago/

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後、実家の近所で開業なさっている医師でギタリストの、はえの先生の所へ修理依頼品を預かりに伺ったのですが、そこでギターやお互いのお仕事の事や、果ては家族観や死生観みたいな、普通は余り人に話さない様な濃密なお話を沢山させて頂いて、物凄い良い時間を過ごせたなあと。正直時間を忘れて話し込んであせってしまいました(笑)特に医療関係の話は興味深いものがあります・・・

楽器の方、もう修理に取り掛かり始めてますので、しばらくお待ちくださいね。

物凄く良い先生なので、もしご近所の方がいらっしゃったら、病気の時には是非(あれ?言い方変だぞ?)掛かってみてください。

はえの医院(HP等は無いようです)
〒636-0081 奈良県北葛城郡河合町星和台2丁目1−13
Tel 0745-34-0067

とまあ日記的な話はここまで!

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80'sシャーベルMODEL6の電装系〜総合修理

埼玉県在住のT様より80'sシャーベルMODEL6の電装系〜総合修理のご依頼を頂きました。

症状としては、音が出なくなった!と言う事と、全体的な調整を御願いします!との事でお預かりしました。

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(サムネイルをクリックして下さい。画像が拡大します)
到着時なんですが、非常に大事にしておられたらしく、年代の割には非常に綺麗な美観を保っている状態でした。

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ヘッドレイアウトも伝家の宝刀!ジャクソンヘッドです。

この年代のジャクソン社の多くはナットにケーラータイプの物が取り付けられています。このナットの構造は、1・6弦がナットの中で引っかかり過ぎるので、本来このヘッドレイアウトに取り付けるのは良くないんですけどね・・・・通常のナットと相まって、微妙にチューニングの安定度が悪いので、本来ならフロイドローズタイプ(上締め)のナットに換装すべきです。

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ジャーベルと言うとボルトオンネックだったりする事も多いのですが、これはスルーネックモデルで、ジャクソン直系のMODEL6(日本製)という品番の物ですね。この特徴的なスイッチは各PUのオンオフスイッチとなっています。

演奏中のPU切り替えにおいての操作性はすこぶる悪いのですが、決め音でガンガン行くには非常に良いスイッチングシステムではあります。確かジェフベック先生がこのコントロールレイアウトのストラトを使ってましたね。アレは特殊なスイッチワイヤリングだそうですが。。。

その他特徴的なのは、アクティブミッドブースター回路が内蔵されている事でしょうか。
コントロールとしては1アクティブ回路ヴォリューム、1マスターパッシブトーン、ミッドレンジゲインと言うレイアウトになっています。

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とまあその辺りの事は置いておいて、音が出ない原因を探す為にコントロールパネルを開けて見ました。
今まで全く触らずにオリジナルのままだそうですが、相変わらず量産品でアクティブ系楽器の配線は雑然と配線されている事が多いですね。。。

私も量産メーカーに居たので判りますが、メーカーでは時間に追われて配線作業をやらざるを得ず、音さえ出れば良いという生産の仕方をしてしまっていたのでしょう。こうなってしまうのも致し方ない事ではあります。本来はもっときちんと時間を掛けて配線すべきなんですけどね。。。

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音が出ないトラブルなので、原因はこの基板周りだろうと、サクっと電装系を分解してみました。

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観察してみてすぐに原因が判りました。日本製プラスティックケース入りのジャックの破損と、ミッドブースター回路のコンデンサの液漏れですね。写真ではちょっと判りにくいんですが・・・電源バイアス部分のデカップリング用電解コンデンサの破損によりICも巻き添えを食ってお亡くなりになってました。

因みに電解コンデンサにも耐用年数と言うのが決まっていまして、使い方(回路設計の仕方や使用時間)にも拠るのですが、いつかは駄目になります。今回の例は特殊とは言えないまでも、十分起こり得るトラブルの一つです。(入れっぱなしで忘れてたエフェクターの電池が液漏れしたりするのと同じですね)

この辺の部品をさくっと交換して回路の修理自体は終了です。
ジャックはスイッチクラフト、回路上の電解コンデンサは全てニチコン社製で定数の変更無し。

ICに関してはオリジナルで付いていたTL系がどうにも寝ぼけた音だったのでJRC4558DDに交換しました。

私の耳はどうもFET入力のOPアンプが好きではない様です。この変更に関する辺りはオーナー様と相談の上決定しました。この辺のデュアル(ニ回路入り)OPアンプですと、大抵なんでも使えるので、修理するのは非常に楽です。

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因みに、OPアンプと言う部品はこんな8ピンの物が楽器では良く使われています。

安価な¥80位の物から¥2000を越える高い物まで多種多様にありますが、ご自分で色々取り寄せて交換して音を聞き比べてみるのも面白いと思いますよ。内部回路がシングルかデュアルかを間違えたり、逆刺しをしない限り、大抵音が出ます。
(入力インピーダンスの仕様の問題で使えない物もありますが)
PU交換より手軽に且つ、遥かに良い効果が出る事もあったり、もちろん逆の例もあります。

これは余談ですが、「音楽」と「回路設計」を上手く結びつける事が出来る技術者の方は、あまりICを使いたがりません(様々な理由が有りますがここでは割愛します)。
私もその事にやっと気が付き始めて、トランジスタの勉強をやり直し始めています。。まだまだ学ぶべき事は多い。。。道は長い。。。。

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せっかく部品を全部外したので、今回はノイズシールディング加工も同時に行います。キャビティーに導電性塗料を塗り、それを配線でアースに落としてあげる訳ですね。

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そんな導電性塗料の乾燥を待っている間にブリッジの掃除と調整を行います。、これジャクソンオリジナルデザインのブリッジで、構造自体はフロイドローズを踏襲していますが、調整機構はフロイドローズより遥かに優れていると思います。まあ今や新品ではもう手に入りませんけれど。

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このファインチューナーが後ろに有るタイプはフェルナンデス社からも出てましたね。これらの機構は名アイデアだと思います。

個人的に、この手の物で今いくつか良いアイデアがあるんですが、私個人では金物を開発する術を持っていないんですよね。。。いつか世に出したいとは思うのですが。。。

導電性塗料が乾いた所を見計らって、組み込み始めます。
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PUはジャクソン社製オリジナルですね。
EMGライクなルックスなので好みが分かれる所では有りますが、メタルギターの枠で終わる音ではなく、非常にフレキシブルでレンジが広くて物凄く私は好きです。メサブギーにインプットすると、もうその時点で「有難う御座います!」と言いたくなる程80'sな音でした。

そんな訳で後に私個人的に手に入れましたが、特にシングルコイルの音が私のお気に入りだったりします。

色々ジャクソン関係の資料やネット上の情報を調べると、このPUの開発におけるバックボーンは物凄く味わい深い物が有りまして、しっかりした理屈に沿って作られていたそうですね。

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次に、回路を組み込みます。前回とは違い、綺麗に配線をやり直せば見違える様になりますね。

もう一つ欲を言えば、トラブル防止の為にゴトー製電池ボックスの増設もしたい所なのですが、それらは予算の都合で見送る事となりました。

.
ここから先、作業工程が前後してますが、フレットの擦り合わせとファイリング(形状を整える)も同時に行ってあります。(実作業では電気関係より擦り合せの方を先に行っています)

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画像ではちょっと指紋が付いてしまって汚いですが、フレットの頂点も綺麗に整えてあります。

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ナットの溝が痛んでいた上、変なビビリも出ていたので、溝調整の後、外形を削り直してみました。(施工後の写真を撮り忘れてますが)

そんな感じで総調整を行って・・・・
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完成です!
写真では到着時と違いが判らん(笑)でも良いんです。オーナー様にご満足頂けましたので!
オーナー様のレビューを要約いたしますと、
「弾き易くなった上にポテンシャルが引き出された感じがする!」と喜んで頂けました。

因みに音の方は、文句無しにジャクソン!80's!ドンシャリ!と言った様なイメージを裏切らない音でした。他のどこにも無い音と言うんですかね。やはり時代の音を作ってきたブランドの力をまざまざと感じた。。そんな一本でした。ただ、現在のギター業界の流れや、私個人としては、「ここをもうちょっと、こうしてあーして設計した方が良いのになー」って言う部分は有るんですけれどね。

後、80’sと書きましたが、今のHR・HMシーンに十分通用するトーンを持っている事だけは追記しておきます。

埼玉県在住のT様、本当にご依頼有難う御座いました。同時にSuper Wide-Range Cableもご購入頂き、この時のT様の評価を頂いた事がきっかけになって、SWRCの一般販売を開始する決断をしました。そんなチャンスを下さったT様には本当に感謝しております。

また何か有りましたら、些細な事でもご連絡頂ければ幸いで御座います。

本日はここまで!

関連記事
Super Wide-Range Cable
http://i-r-p.net/cable/
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2008年05月21日

ヤマハLLのエレアコ化

ずいぶん前に完了した作業なんですが、今まで全く触れて来なかったので、今回記事にします。以前、2006年8月頃、これに取り付けるプリアンプ製作の記事「アコースティックギター用PUのミキサー回路」を書いたのですが、2年ぶりの更新と言う事ですかね・・・・なんて放置プレイ。。。。プリアンプの記事を書いた時にはもう既に搭載作業も終えていたと言うのに。。。

今回のヤマハのギターのオーナー様は前回プリアンプに引き続きのお客様でもあります。

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(サムネイルをクリックしてください。画像が拡大します)
前出の記事はこれに取り付ける為の専用プリアンプだった訳ですね。今回はこれにマグネットPUとコンタクトPU二個の増設作業を行います。

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早速取り付け始めましょうか。

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生ギターからエレアコに改造する場合、近年ではエンドピンジャックを利用するのが主流ですので今回はそれに習います。昔はフルアコ同様、側板にジャックを取り付けるものが多かったのですが、最近の新品ではあまり見かけなくなりましたね・・・・オベーション位ですか。

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早速オリジナルのエンドピンを抜きます。と思ったら硬いの何の。。こりゃ接着されてるなーと言う確信はあったのですが、試しに軽く金槌で叩いてみたら、ポロっと取れました。。見事に瞬間接着剤ですね。割合、こういう風に瞬間で止めてある物が多いので、別段驚きませんが。

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次はエンドピンジャックの径に穴を拡げます。ただ単にドリルを使って拡げると、周りの塗装などが欠けてしまったりしますので、一旦ドリル刃の暴れ・逃げ(ズレ・ブレ)防止用に一旦埋め木をします。

その後、ボディーに垂直に穴を開けて、エンドピンジャックを取り付ければ完成!

今回はジャックとボディーの間に、ナイロンワッシャとフェルト布を挟んでボディーに傷が付かないように養生する加工をしてみました。

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次はプリアンプの組み込みですね。今回の作業において最大のポイントは「コンタクトピエゾPUの位置の設定」に尽きます。選択肢がほぼ無限大ですからね。

この辺りを上手くお客様の希望の音色とプレイスタイルに着陸させるのが一番難しい訳です。(その点、マグネットPUのみ・アンダーサドルピエゾPUのみの場合はあまり問題にはなりませんが)

今回この設定の為に、かなり色んなプレーヤーさんのビデオやCDを聞いて、音を脳に焼き付けてから作業を開始しました。

楽器を弾きながら、闇雲にPUを貼ったり剥がしたりを繰り返していくのではとても時間が掛かるので、私の場合はこういう物を使います。
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これ、とある店で売っていた聴診器なんですが、ブレーシング剥がれの検査や、コンタクトPUの取り付け位置のおおよその目安が掴めるので重宝してます。最近だとネット通販で安く買えるみたいです。
これを楽器の範疇で使うのは昔から良く有る手法なんだそうですが、私の場合は、20歳頃に肺炎で入院した病院の看護士さんから得たヒントで使う様になりました。

とは言え、PUにも共振周波数などの特性があるので、聴診器もあくまで目安にしかなりません。そもそも聴診器で聞く音はゴム管の中を通った、高域の無い音なのです。本職の医師が使う様な高い聴診器だとまた違うかもしれませんが。(後、ボディーの表と中ではPUが拾う音も当然違う)その辺り脳内で補完しつつ・・・・・

大体コンタクトPUの取り付け位置が概ね決まった辺りで、
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PUやジャックの取り付けはサウンドホールから手を突っ込んで行います。
この作業は太ってしまうと出来なくなってしまうので、普段から体重コントロールもきっちりやらないといけませんね(笑)

今回はPUの取り付け位置と取り付け方に関しては秘密です。かなり良い感じのスイートスポットを見つける事が出来ました。公開しても良いんですが、プレイスタイルや楽器によっても違うので、この辺りは難しい所ですね・・・

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マグネットPUやプリアンプの取り付け位置はこんな大体この辺で、電池ホルダーはこのブロック周辺に取り付けます。サウンドホール脇にダイアル型のVOも取り付けてあります。

あ、エレアコ化作業では最も気を使わなければいけないといっても過言ではない、弦アースプレートの取り付けも行ってあります(写真は有りませんが・・・)

この辺、部品位置の決定基準は、生音の変化が少ない位置に取り付けるのが条件ですね。ただ、どこに取り付けてもそれなりに生音は変わるので、ある種の妥協線をどこかで引かないと駄目でしょう。

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楽器内部の配線纏めには、ホームセンターなどで売られている両面テープ付きの配線フックです。これにフェルトを自分で貼ったものを愛用しています。

これを側板の適度な所に貼って配線をジャックやPUまで這わせてあげる訳ですね。私の場合は原則としてトップ材やバック材には貼りません。必ず側板だけで綺麗に纏まるように仕上げます。

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全ての部品を取り付け終わった後・・・各PUのゲイン調整とミックス具合、出力調整を行って・・・完成です!今回はコンタクトPUの割合が意外に多い感じになりました。

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6弦の音量感が強く感じたられた場合は、PUを少しブリッジ側に下げてみて下さい。(PUが斜めになる感じで)

なんだかんだでPUのバランスを取るのに大変苦労した訳ですが、完成してみると、感慨深い物がありますね。

肝心の音はというと、アンダーサドルピエゾ物の楽器と比べると木の風合いが音にフィードバックされて、生音に近いふくよかさが有るのを如実に感じられます。

アンダーサドルピエゾ物に関しては、爛々と輝くようなエッジ感が素晴らしかったり、そこがアコギらしかったり、逆にライン臭かったりローが無かったり・・・毀誉褒貶、様々な意見があるPUシステムが多いのですが、今回構築した機構はそういう点を全て解決出来るシステムと言えます。

あえて駄目な点を上げるとするならば、各弦の音量バランス及び各弦の解像度はアンダーサドルピエゾに比べて自由度が低いと感じました。(それがあえて「生っぽい」と評価される所以かもしれませんが)

とは言え、実際かなり良い音に仕上がってまして、オーナー様からもその生っぽい辺りや、タップ音などに関して喜んで頂けました。

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こんなプリアンプのワンオフも承っておりますので、興味を持たれた方はご連絡頂ければ幸いです。

本日はここまで!

関連記事
「アコースティックギター用PUのミキサー回路」
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2008年05月20日

ミッドブースター搭載2連発

当方のBLOG関係では人気No1の「オリジナル楽器内蔵型ミッドブースター」の取り付けネタが、最近はトンとご無沙汰だったので、ちょこっと施工例として記事をアップしてみます。

大阪府在住のギタリストM様よりミッドブースター取り付け及び、全体の調整作業をご依頼頂きました。
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(サムネイルをクリックして下さい。画像が拡大します)
バッカス社製テレキャスのコピーモデルですね。このシリーズはフェンダー本社からクレームが来て全部生産中止になったそうですが。。。コピーに関する是非は置いとくとしても、量産品としては丁寧に作られたギターである事に変わりはありません。

b_te_mid3.jpg
今回はコントロールパネルにミッドゲインノブを取り付けますので、分解します。

b_te_mid4.jpg
そいで、今回スペースがかなり狭いので、VOとTONEポットは16ファイの物に変更した上で、その中間にミッドブースター回路を増設しました。

b_te_mid5.jpg
次は電池内臓スペースの話なんですが、今回、「電池ボックスは付けてくれるな・外から電池の入り口が判らない様にしてくれ!」と言う依頼だった為に、PG下に電池ボックススペースを掘りました。これだと電池交換には手間が掛かりますが、外からは判りません。

因みにコントロールキャビティーに電池も同梱する案もあったのですが、スペースが足りず無理でした・・・後、コントロールキャビティーに電池を同梱するとトラブルを起こす事がかなり多いので、今回のようなオーダーの場合でも、出来れば避けたいと言う想いが有ります。

b_te_mid7.jpg
そして組み込み〜各部調整してから完成!今回はヴィンテージライクなルックスの6連ブリッジに交換作業の依頼も頂いておりました。

納品後、物凄いパワーですね!と仰られていた辺りで喜んで頂けました。

大阪府在住M様、ご依頼有難う御座いました!
また何か御座いましたら宜しくお願い致します。

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次は東京在住Y様よりミッドブースター取り付けのみのご依頼頂きました。

y_st_mid.jpg
ボディーのみのお預かりだったので詳しい事は判りませんが、フジゲン製のストラトボディーだそうです。

y_st_mid2.jpg
電池ボックスキャビティーをトリマーで切削加工しておきます。

y_st_mid3.jpg
次はPGにミッドブースターを配線します。今回はM・VO/M・TONE/ミッドブースターゲインと言うレイアウトになります。まあ良くあるレイアウトパターンですね。
元の写真は無いですが、PU周り・セレクター周りがかなりグチャグチャだったので、それも修正しました。

y_st_mid4.jpg
加工済みのボディーとPGを組み込んで終了!今回は弦を張っての調整作業がない為に作業自体は直ぐ終わりましたが、気持ちとしては弦を張って最終の定数調整をしておきたかったなと思ったり。

東京都在住のY様、ご依頼有難う御座いました!
また何か御座いましたら宜しくお願い致します。

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大変有難い事に、この楽器内蔵型ミッドブースターに関して頻繁にお問い合わせ頂いております。
これまでの販売傾向や、お客様ご自身での取り付けにおいての失敗件数の関係から、現在「部品」として個別販売を行っておりません。この商品は取り付けまでを一セットととしてご提供しております。

ミッドブースターの部品価格自体はベーシックな物で¥8000程度ですが、取り付け施工価格等は楽器によってかなり変動が有ります。メールフォームから取り付け対象楽器の詳細をご連絡の後、お見積もりをご連絡させて頂きますので宜しくお願い致します。

といったような所で、本日はここまで!
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2008年05月19日

オリジナルストラトを製作させて頂きました

岐阜県F様よりオリジナルストラトのオーダーを頂きました。今回製作中の写真は殆ど残ってないのですが、無垢の板材から全てハンドメイドでの製作でした。

f_st1.jpg
(サムネイルをクリックしてください画像が拡大します)
今回はアルダー2ピースボディーです。ネック材の写真が無い。。
確かこれ作ってる時にデジカメの調子が悪くなったりPCのファイル整理でいろいろな物を無くしてしまった時期なんですね。。。

f_st2.jpg
エボニーの指板貼り付け中。。。メイプルネックの切削加工中の写真を無くしたようで。。。。

f_st3.jpg
塗装中です。今回は塗料メーカーに勤める知人から、「オーダー入ってるんだったら使ってくれません?」と言う事で、特別に分けて頂いたラッカーベースの新製品塗料で塗装を行ってあります。(その事に関してはオーダー主にも了解を得ています)
今回は、塗装前、生地の段階で導電性塗料を塗布してあります。

その他は。。。オーダー主のカラーコーディネートの希望通り、コーヒーブラウン色で生地着色処理してから、クリアを吹いてあります。
塗装膜をかなり薄く仕上げてあり、バフマシンで磨いたら絶対バフ焼けを起こす厚さなので全て手磨きです。。。後、どんなに乾燥させて仕上げても、目やせ(木の導管に沿って塗装がやせる事)が起こり続けます。

F_st4.jpg
ネックも同様に下地から全てオールラッカーとなります。

f_st5.jpg
ストラトと言えど、「コピーモデルを作ってくれ」と言われるのは、あまり気が乗らないのも事実で、当初ブランドデカールを入れる気は無かったのですが、オーダー主様から、どうしても入れてくれと言われましたので、今後使わない予定のブランドデカールを貼りました。(実はちょっとヘッドシェイプを変えてあるんですけれどね)

その後紆余曲折があって塗装を仕上げて組み込んだら・・・

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完成です。

パーツのカラーコーディネートは全てオーダー主様からの指定での組み合わせとなりました。因みにPUはオリジナルでワンオフしたPUです。有る工法を取る事により、シングルコイル特有のノイズを極限まで抑えて尚シングルコイルらしい高域を温存したモデルとなります。
今回、ワンオフするにあたり4セット作りましたが、既に完売となり、次回生産は未定です。一セットは知人を介してなぜか某有名ギタリスト様の所へ渡った様です。。。

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PGやボディーシェイプ等、実は微妙にフォンダー社の物とは変えて有ります。ぱっと見はサイドジャック・プレート無しのヒールレスになってる事、ミッドブースター用のバッテリーボックスが取り付けられている事が大きなポイントでしょうか。

ブリッジはお客様の好み等々を勘案した上で、今回はゴトー社製の510シリーズのイナーシャブロックが鉄、ブリッジ駒はブロックタイプ、6点取り付けタイプの物を選択しました。

コントロールは

5WAYセレクター
M・VO/M・TONE
ミッドブースターのゲインコントロール

となっています。
PUの特性と相まってかなり多彩な音を作る事が出来るコントロールになっています。

f_st8.jpg
ペグもブリッジ同様お客様からの指定でロトマティックタイプのマグナムロックを選択しました。
この辺り、基本パーツやコントロールは全てお客様の希望の物となっております。

以下仕様

ネック:ハードメイプル柾目+ダブルアクションロッド+オリジナルグリップシェイプ

指板:エボニー+ポジションマークレス(サイドにアヴァロンドットのみ)

フレット:ジェスカー社製ミディアムサイズ+ボールエッジ仕上げ

ボディー:アルダー2ピース

塗装:オールラッカーグロス仕上げ

ブリッジ:510TS-FE2(フローティングセッティング)

ペグ:SGS510・H.A.P.M

ナット:牛骨

ピックアップ:カスタムワインドオリジナルPU(アルニコ5)

シールディング:カーボン系シールディング塗料+PGアルミ箔処理

コントロール:5ウェイレバースイッチ M・VO M・TONE オリジナルミッドブースター

弦:ダダリオ0.10〜0.46


とまあ、こんな感じで製作仕事もお請けしておりますので、気になった方はメールフォームからご連絡頂ければ幸いです。

本日はここまで
posted by IRP Products at 15:34| Comment(2) | TrackBack(0) | オリジナル楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月16日

S氏LPネック折れ修理(オービルbyギブソン)

そういえば、リペア関連では定番のネック折れの記事を一切書いていない事に今更ながらに気が付きました。

なぜ今まで無かったかと言うと、木工中はホコリが舞い、あまりデジカメを触りたくないので写真を撮っていないと言うのも要因の一つでしょうか。

さて今回は、ネック折れ修理(オービルbyギブソン)をごく簡単に紹介しておきます。

オーナーである知人のS氏が、引越しの際に誤ってネックにひびを入れてしまったそうで・・・・物凄く思い入れが有る楽器なので出来れば何とかして治して欲しいと言う要望と、折れたままの楽器持ってるのを見るのは忍びないと言う私の気持ちから、今回の修理が始まりました。

現状はどんなかと言いますと、
d_neck1.jpg
ヘッド裏のヒビ、手で押すと傷口がパクパク動く程のヒビです。
(サムネイルをクリックしてください。画像が拡大します)

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ヘッド突き板の剥がれ

d_neck3.jpg
指板の剥がれ

ご覧の通り、ヘッド裏のヒビと、指板・ヘッド突き板剥がれと言う割と良く有る破損状況ですね。
指板剥がれとヘッド突き板剥がれは比較的簡単に修理できますが、問題はヘッド裏のヒビですか・・・

と言っても、こんなのはネック折れの修理の中では「軽症中の軽症」ですので、サクっと修理します。

で、その修理に関してなのですが、割れてから数年という時間が経ってしまっていた為、単純に接着剤を流し込んでクランプを掛けても強度は取り戻せないだろうと言う判断をしました。その為、今回はヘッド裏にスリットを掘ってメイプル材で埋め木補強を行う事にします。

何段階かに分けて、接着作業を行うのですが、今回の一発目は単純に現在のヒビ部分を接着してしまいます。(写真は無いですが)

その後、
d_neck4.jpg
こんな感じで、今回は最も傷の深い所・力が掛かってしまった所など、2箇所にスリットを掘りました。このスロットはヘッド角度と同一に掘ってあります。因みに真ん中の落書きはトラスロッドの調整口の位置の目安をざっとマジックで書いた状態です。

そして、このスリットに
d_neck5.jpg
ハードメイプル材の埋め木を挿入して強度回復を行う訳ですね。この埋め木はハードメイプルの強度を最大限に生かす為に、ヘッドに対し垂直に柾目になるように木取りをして有ります。と言う事は側面は板目です。写真で判ります?

木目方向.PNG
(サムネイルをクリックしてください。画像が拡大します)
絵に描くとこんな感じですね。弦の張力・ひび割れの方向に対して、補強強度が最大限になる様にする訳です

これをスリットと同じ形状に整形する訳ですね。実際はコピー用紙の厚み一枚分位大きく作ります。スリットに抜き差しした時にキュッと抵抗がある程度に大きく。。。判りますかね、、この感覚。。。文字じゃ判り難いですよね。。すいません。

そして接着を行う訳ですが、
タイトボンド.jpg
接着にはタイトボンドを利用します。近年入手性もかなり良くなり、仕上がり強度も良好なので、メーカーや楽器修理生産の現場では重宝されてます。実の所、現在私は全然別の接着剤を使ってますが。。。。この記事はまだこの接着剤を使っていた頃の話です。
楽器修理の世界では膠(にかわ:動物性たんぱく質を煮出して作られた昔ながらの接着剤)で修理するのが本道って事も言われますし、お客様のリクエストなど、ケースバイケースで柔軟に対応しますが、個人的にはあまり使いません。

昔の勤務先のメーカーに居た頃、私は一日中アコギのブリッジの台座を整形〜接着作業を行うような部署で集中的に仕事をしていた為、接着剤に関してはいろいろ研究させて頂く機会が有ったりした。もはや何本ブリッジを張ったか把握できない程の数です。その頃の経験が今物凄く役に立っています。まだまだ個人的に結構な私費を投入して研究をこっそり続けてますけれど。

d_neck6.jpg
で、こんな感じで埋め木を接着!通常クランプを3本互い違いに掛けるんですが、なぜか2本の画像しか残ってませんでした。今回は修理部分をサンバーストで塗り潰してしまいますので、メイプル材のみで埋めてあります。もちろん修理部分を判りにくくする場合はマホガニーや、マホメイプルなどのプライウッドを埋める事もあります。

後ヘッドの突き板と指板剥がれは別の接着剤を使い、既に修理済みです。

d_neck7.jpg
ちょっと写真は大きいですが、こんな感じで埋め木の整形まで終わった所です。今回の楽器はグリップ部分に打痕が多かったので「どうせならそれも修理してしまえ!」とばかりに周りの塗装も剥してしまいました。

今回はこの後、当て木をしてボリュート
d_neck11.jpg
(強度を稼ぐ為にヘッド裏に突起を作る事。70年代のギブソンや、アコギなどに良く見られる補強形状)を入れるかどうするか?と言う所ですが・・・・今回はこの補強の時点で強度の回復が図れている事と、予算の都合で見送る事としました。

余談ですが、ボリュートの追加工に関して、ネック折れには付き物の様に言われますが、下手を打つと逆に強度が低下する事もありますので、これもまたケースバイケースでの対応になります。お客様がリクエストして下さる場合も多いんですが、欠損部分の状態次第により、私が必要か否かを判断します。

個人的には何でもかんでもヴォリュートを入れる修理の仕方は無駄に費用が嵩むだけだと考えています。

d_neck8.jpg
ちょっと判りにくいですが、サンバーストになってるのわかります?
こうして修理部分の目隠しと保護を行う訳ですね。手間の分高くつきますので予算次第ですが、、木目を書いたり元の色に合わせて修理痕を判り難くする事も可能です。

d_neck9.jpg
塗装が乾いた頃を見計らって部品を組み込み、調整してめでたく完成!です。因みに、ナット交換とフレットの擦り合わせも同時に行ってあります。

なぜか画像が曇ってますね。。

d_nech10.jpg
元々S氏がセルフでネックグリップに艶消し加工していたので、それにあわせて、サンバースト部分は艶消しクリアを塗ってあります。

納品後、S氏から「すげえがっちりした音になって帰ってきた!ありがとう!」と言って喜んで頂けました。

その喜びの声を聞く為にこの仕事やってんだよなーと言う所でいつもながらに感慨深いものがありますね。特にこういう楽器が生きるか死ぬかの修理を終えた後は。

と言ったような所で本日はここまで!
posted by IRP Products at 22:38| Comment(2) | TrackBack(0) | ネック折れ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月15日

楽器に関するQ&A電気回路編その1

前回に引き続き、頂いているご質問に、一問一答形式でお答えしようと思います。今回は電気系統編

Q1
ポッドからガリが出るんですが接点復活剤とかで直りますか?

A1

電気系統のトラブルと言ったらこれ!と言う位、よく頂くご質問ですね。
ポットとは所謂ヴォリュームと言う部品の事なのですが、
ポットアレコレ
(サムネイルをクリックしてください。画像が拡大します)
こういうルックスのものですね。楽器屋さんでも売られています。

これらの部品は楽器本体についてるツマミやエフェクタ・アンプに付いている物も機構としては同じ物になります。

このガリが起こる多くの原因は以下の画像の部分、
ポットアレコレ2
ヴォリューム内部にあるブラシや、それに接する抵抗体の磨耗や酸化です。接点復活剤と言うのは、その消耗してしまった部分を一時的に回復させるだけの代物で、完全に回復させる訳ではありません。あくまで一時しのぎとお考え下さい。
完全に修理するには部品の交換以外はありません。

酸化防止の為の密閉型のヴォリュームなどもありますので、交換の際にはそういった長寿命品を候補に入れておくのも良いかと思います。

因みに「ポッド」と言うのは間違いで、正しくはポテンショメーター(Potentiometer)の略で「ポット(Pot)」と言います。ネット上で誤記されているのを良く見かけますが・・・・・

これは余談なんですが、メールで「ポッドのガリが出るんですが直りますか?」と言うご質問を頂いた場合、たまにLINE6のPODシリーズの事だと勘違いする事があります。

ご質問をくださる場合は、もう少し細かい内容をお知らせ頂けると幸いです。

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Q2
コンデンサってどこの物が良いのですか?お勧めはありますか?

A2
コンデンサとはこういうルックスの物です。
コンデンサアレコレ
左からオイル・電解・セラミック・タンタル・マイラとなります。
この外にもマイカ・スチロール・MKTと言った物がありますが、パッシブの楽器内部使われるのは、セラミック・マイラ・オイルが一般的でしょうか。

コンデンサの銘柄によって音が微妙に変わるのは周知の事実ですが、どこの製品の音が良い・悪いと言うのは、プレーヤーや楽器によりますので一概には言えません。出したい音の着地点次第でしょうか。そういった意味で、お勧め品と言うのは一言では言えません。私個人としてはある基準に則って選択するようにしています。

同数値のコンデンサでも「銘柄が変わると音が変わる」と言う現象についてなのですが、実物は数値に誤差が結構有ります(LCRメーターで計ると良く判る)。
「オイルコンだから音が太い」とか「セラミックコンデンサだからローが出ない」などの「〜だから」と言うのはあまり当てになりません。
楽器の音(電気に絞ると)はPUのコイル成分や、ポットの抵抗値やカーブの誤差によるトーンの使用感の違い、その他の要因も複雑に絡み合って音というのは成り立ちます。

ですので、盲目的に「オイルの物が良い」、「マイラは駄目だ」とは言えないでしょう。

但し、価格の高いコンデンサは、それなりの理由があります(詳しくはここでは割愛します)

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Q3
配線材による音質の違いや、配線材その物の良し悪しとはどういう事を指すのでしょうか?

A3
配線材に関しては、上記のコンデンサの話同様、良い悪いは一概に言えません。又半田付けの仕方でも随分差が出ます。

そういえば、近年WEなどのヴィンテージの配線材などが持て囃されていますが、皮膜の中で錆びていたり、単線だとボキボキに折れていたり、半田が乗りにくかったりするものも見受けられる為、諸手を上げて良い物だとは言い切れない所もあります。

やはりプレーヤーと出音と着地点と予算次第で、色々試すのが良いかと思います。

これは個人的な話ですが、皮膜が熱に弱い物や、あまりに柔らかい物は断線等の危険性を回避する為、避けるようにしています。

その為、私の方で常備している配線材は、あるケーブル会社が作っているUL規格の製品で、耐熱皮膜が使われている物を主に使っています。
それ以外にも使い分けが必要なので、必要とあらば配線材自体を良質な材料から、何種類か用途別に作る事もあります。構造も使う材料も適度に変えて有ります。

この辺はとりあえず秘密にさせてください。

Q4
半田付けのコツを教えて下さい

A4
半田付けのコツは、

「常にコテ先を綺麗に保っておく事」
「接合面を綺麗にする事」
「予備半田をきちんとする事」
「接合する部品同士をきちんと暖めてあげる事」
「コテ先で半田を混ぜない事」
「暖め過ぎない事」

文字で書くと良く判りませんね(笑)

一番重要なのは

「何度も経験する事」

でしょうね。がんばって練習してみてください。

次に半田付け作業の良し悪しの基準ですが、ポイントとして、「半田で部品を接合してはいけません(半田自体に接合強度を求めてはいけません)」と言う事ですか。
あくまで「半田は接合の補助をする為の物」です。物理的な強度は殆ど期待できません。

前提として部品同士をちゃんと絡げて(端子に配線を巻き付ける)、その状態で導通が確保出来ていて、その状態を維持する為に少量の半田を流して固定してあげる、と言うのが本来の半田付けです。実験機などは絡げてしまうと面倒ですのでこの限りでは有りませんが。

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といったここまで書いた所で力尽きましたので本日はここまで!
posted by IRP Products at 18:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽器に関するQ&A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする